研究課題
本研究では、カタユウレイボヤ精子の表面タンパク質濃縮画分にはastacinファミリーのメタロプロテアーゼが多く、少なくとも5分子がタンパク質レベルで存在すること、メタロプロテアーゼ阻害薬GM6001が精子の卵外被通過までのいずれかの過程を阻害することを、明らかにしてきた。このため、卵外被分解因子の候補をプロテアソーム系に絞っていた当初の計画を変更し、astacinメタロプロテアーゼ群の受精における機能を調査してきた。本年度では、精子には卵外被分解活性があり、主な基質は卵外被主成分VC57タンパク質であること、その反応がGM6001に阻害されることから、精子による卵外被分解にメタロプロテアーゼが必要なことを、明らかにした。すなわちメタロプロテアーゼは、卵外被分解酵素の正体であるか、または卵外被分解酵素の活性化に必須の因子である。GM6001はastacin以外のメタロプロテアーゼも阻害するので、astacinファミリーだけの機能を確認するため、プロテアーゼドメインのリコンビナントおよび、TALENによるノックアウトも行ってきた。しかし、リコンビナントは大腸菌・昆虫細胞発現系のいずれでも活性体作出に成功せず、ノックアウトでは変異体は変態期致死となった。変態期の致死性を回避するための組織選択的ノックアウト系の確立を試みたが、いずれも未だ成功していない。以上より、カタユウレイボヤ精子による卵外被分解にはメタロプロテアーゼが必要であり、分解の場に最も多く存在するであろうメタロプロテアーゼは、astacinファミリーであることを、本研究により明らかにした。組織選択的ノックアウトのネックとなっていた技術的問題は現在は解決されており、astacinノックアウト成体ホヤの育成に成功すれば、astacinファミリーメタロプロテアーゼの受精における機能を確定することができるだろう。
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The FEBS Journal
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