研究代表者は前年度までに分泌性因子neudesinの遺伝子欠損マウスがエネルギー消費亢進に伴う抗肥満の表現型を示すこと、エネルギー消費亢進には交感神経系の活性化が関わることを明らかにしていた。これらの結果を踏まえ本年度はneudesinが交感神経系を制御する機序の解明に取り組み、下記の成果を得た。 PC12細胞を用いた解析によりneudesinがノルアドレナリン産生の律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を抑制する可能性があること、さらにカンナビノイド受容体の薬理的な阻害によりneudesin活性が阻害される可能性があることが判明したので、neudesinの作用とカンナビノイド経路の関連性をより正確に評価するためにCRISPR/Casシステムを利用してneudesin欠損細胞株を樹立した。 また新たにneudesinが白色脂肪細胞に直接作用する可能性があることを明らかにした。neudesinKOマウスでは一部の白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞様の性質を帯びる、白色脂肪の褐色化が認められたが上述の交感神経系の活性化に加えて、neudesinが脂肪細胞に直接作用して交感神経刺激の入力を抑制する可能性が高いことを見出した。すなわちアドレナリン受容体刺激に伴う脂肪分解の亢進や、代表的な褐色化マーカーのUcp1発現がneudesin共添加によって抑制される可能性が高いことを見出して局所的なneudesin作用の一端を明らかにした。 上記の成果は各種学会で発表し、また現在論文投稿に向けた準備を進めている。
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