研究課題/領域番号 |
15K18867
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
谷川 尚 帝京大学, 薬学部, 助教 (00609985)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | GPR55 / リゾホスファチジルイノシトール |
研究実績の概要 |
GPR55は、1999年にクローニングされたGタンパク質共役型の受容体であり、ヒトでは319個のアミノ酸からなるGタンパク質共役型受容体である。我々は、ヒトGPR55を発現させたHEK293細胞を用いて、GPR55がリゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)に対する特異的な受容体であることを報告してきた。しかし、GPR55の機能や役割等に関してはまだ不明な点が多い。GPR55は、脾臓やリンパ節などの免疫系組織に高く発現しているが、まだ詳しい発現分布はわかっていない。今回の研究では、免疫系におけるGPR55の役割を明らかにすることを目的として、免疫系の細胞であるマウスB細胞及びT細胞におけるGPR55の発現について詳しく調べた。セルソーターを用いて各分化段階におけるT細胞及びB細胞を単離した結果、成熟過程におけるGPR55の発現は、成熟過程が進むにつれてGPR55の発現が高くなることが観察された。マウスにおいてB細胞でのGPR55の発現が高かったことから、GPR55が発現しているB細胞株であるIM-9細胞を用いてB細胞におけるLPIとGPR55の役割について調べた。LPIの細胞増殖に及ぼす影響を調べた結果、LPIをIM-9細胞に作用させると、細胞増殖が促進された。また、マウスリンパ球にLPIを作用させても、リンパ球の増殖を促進させることが確認された。GPR55の内在性リガンドであるLPIは、生体内においてもリンパ球の増殖促進・分化に関与している可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究で、B細胞及びT細胞の成熟過程におけるGPR55の発現は、成熟過程が進むにつれてGPR55の発現が高くなることがわかった。B細胞株であるIM-9細胞にLPIを加えることにより細胞増殖が促進したこと、マウスリンパ球においても細胞増殖の促進が確認された。これらのことから、GPR55が免疫応答での増殖促進・分化に関わっている可能性がわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
GPR55は免疫系の組織に高く発現しており、B細胞及びT細胞においては成熟過程が進むにつれてGPR55の発現が高くなる。GPR55が免疫系細胞の機能や細胞増殖の調節に関わっている可能性が考えられることから、GPR55及び内在性リガンドであるLPIの作用をより詳細に調べ、GPR55とLPIの機能と役割を明らかにしたいと考えている。特に、GPR55が免疫系組織に高く発現していることから、GPR55と炎症における生体内での関わりについて追究したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を使用してきたため、研究計画に変更はないが、当初の見込み額と使用額が異なった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画に特に変更はなく、前年度の研究費を含めて、当初予定していた計画通り研究を進めていく。
|