研究実績の概要 |
スフィンゴミエリン合成酵素 (SMS) は2つのアイソフォームからなり、SMS1はゴルジ体、SMS2はゴルジ体と形質膜に局在する。私達は、免疫沈降法とBlue-Native PAGEを用いて、SMSがホモダイマーを形成することを見出した。また、Brefeldin処理で小胞体からゴルジ体輸送を阻害しても、SMSのホモオリゴマー形成に影響がなかったことからSMSは小胞体で複合体を形成することが分かった。アミノ酸置換変異体と化学架橋剤を用いた実験より、SMS1はN末端の50番目のシステイン残基、SMS2はC末端の343, 348番目のシステイン残基が架橋されることが分かり、これらのシステイン残基はホモダイマー形成において近傍にあることが明らかになった。また、C末端を欠損したSMS1, SMS2はホモダイマー量が減少したが、SMS1のN末欠損体はホモダイマー形成に影響がなかったことから、SMSオリゴマー形成にはC末端を介した相互作用が重要であることが分かった。興味深いことに、SMSのC末欠損体の細胞内局在を調べると、ゴルジ体の局在が減少し、小胞体の局在が増加した。蛍光タンパク質再構成法を用いた実験より、SMSホモダイマーのN, C末端は互いに近傍にあるが、C末欠損体ではN, C末端の相互作用のバランスが乱れることが分かった。以上の結果より、SMSのC末端を介したホモオリゴマー形成は、SMSのゴルジ体への効率の良い輸送に重要であることが示唆された。
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