研究課題/領域番号 |
15K18869
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平川 城太朗 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (30609160)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リンパ球ホーミング / アレルギー性鼻炎 / 抗糖鎖モノクローナル抗体 / 硫酸化糖鎖 |
研究実績の概要 |
リンパ球ホーミングはリンパ組織内の高内皮細静脈上に発現する硫酸化糖鎖にリンパ球上のL-セレクチンが結合することで開始される生体内防御機構である。これまでに本研究者は、鼻腔由来の抗原に応答するリンパ組織である鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)へのリンパ球ホーミングには、上述の硫酸化糖鎖が必須の役割を果たすことを硫酸基転移酵素欠損マウスを用いた解析により報告してきた。硫酸基転移酵素欠損マウスではNALTへのリンパ球ホーミングが抑制されるとともに、アレルギー性鼻炎などのアレルギー反応が抑制されることが明らかとなっている。本研究では新規に樹立した抗硫酸化糖鎖モノクローナル抗体(S2)を用いて、リンパ球ホーミング阻害に基づくアレルギー症状の抑制・緩和が可能であるかについて検証を行った。 S2抗体はマウスIgM抗体であるため、マウスを用いた網羅的な解析には抗体の標識が必要不可欠である。そのため、解析に必要なモノクローナル抗体の腹水化、精製、Biotin/AlexaFluor等の標識を行い、フローサイトメトリー及び免疫組織染色により抗体活性の確認を行った。またS2抗体は6-sulfo-sialyl Lewis Xと呼ばれる硫酸化糖鎖構造を特異的に認識するIgM抗体であり、IgGとは異なる血中動態を示すことが予測される。そこで具体的な抗体の投与量、投与期間、投与経路、半減期、組織への集積などビオチン化S2抗体を用いたELISAにより解析を行った。解析の結果、S2抗体の単回投与後に投与経路違いによる半減期の違いが尾静脈/腹腔投与で確認された。以上より、ビオチンS2抗体を検出するELISA法は確立されてはいるが、組織へのS2抗体の蓄積などさらなる解析が必要であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末に本申請者の所属移動があり、若干の遅れが生じている。当初予定していたS2抗体の動態に関する研究を速やかに進める必要があるが、解析系は既に樹立出来ていることから遅れを取り戻すことができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、S2抗体投与マウスで見られたアレルギー症状の抑制はどのようなメカニズムに基づくものなのか、NALTリンパ球サブセットの動態変化やサイトカインの発現解析に着目した解析を進める。 硫酸基転移欠損(DKO)マウスで見られたアレルギー症状抑制の要因として、NALTへのリンパ球ホーミング抑制の他、Foxp3+制御性T細胞(Treg)のホーミングには硫酸化糖鎖以外にCD44/ヒアルロン酸(HA)、PSGL-1/P-セレクチンの接着が関与するため、DKOマウスではFoxp3+Tregの数が野生型マウスと同数であることが明らかとなっている(Ohmichi and Hirakawa, J. Exp. Med., 208:1015, 2011)。そこで、S2抗体投与後のFoxp3+Tregや各リンパ球サブセットについてフローサイトメトリー、Tregが産生する免疫抑制性のサイトカインIL-10、TGF-βの発現をリアルタイムPCRで定量する。 次に、花粉症やアレルギー性鼻炎の主要な抗原として知られるスギ花粉(Cry j1)やチリダニ由来のハウスダスト(Der p1)を経鼻的に投与し、OVA投与マウスと同様の鼻炎症状が観察されるのか、S2抗体投与後に鼻炎の抑制効果が見られるか検討を行う。抗原については、市販の天然型(未精製品)及び組換え型タンパク質(精製品)を入手し、その抗原性についても比較検討を行う。抗原の抗原性はタンパク質に付加する糖鎖構造の違いによる可能性を考慮し、糖鎖結合性のレクチンを用いたウエスタンブロッティングにより抗原に付加する糖鎖の特定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請者の所属移動により、研究計画の変更と研究費の執行に変更が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に執行を残した残額と次年度の研究予算を合算した合計額を研究計画に従い執行する予定である。
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