本研究者が樹立した抗硫酸化糖鎖モノクローナル抗体(S2)を野生型マウスに投与すると、鼻咽頭関連リンパ組織へのリンパ球ホーミングが阻害され、アレルギー性鼻炎の症状が抑制することが明らかとなっている。本年度は引き続き、S2がアレルギー性鼻炎を抑制するメカニズムについて解析を行った。S2は末梢リンパ節および鼻咽頭関連リンパ組織へのリンパ球ホーミングを著しく抑制し各リンパ組織を構成するリンパ球数を減少させ、免疫応答を低下させる。さらに(卵白アルブミン)OVAを抗原とし野生型マウス(C57BL/6)に投与し、作製したアレルギー性鼻炎モデルマウスにS2を投与すると、抗体のクラススイッチに重要なサイトカインであるインターロイキン-13の発現を低下させ、また免疫抑制のサイトカインであるインターロイキン-10の発現を増加させることが明らかとなった。以上より、S2を投与することでIgEへのクラススイッチが抑制されるとともに、鼻咽頭関連リンパ組織内が免疫抑制性の環境となることで、アレルギー性鼻炎が抑制されたと考察された。インターロイキン-10は免疫抑制性のT細胞である制御性T細胞が産生するサイトカインとして知られる。そのためS2投与後の制御性T細胞の割合を再解析したところ、S2を投与した群では制御性T細胞以外のリンパ球ホーミングは抑制されるが、制御性T細胞のホーミングは抑制されないことがFACS解析及び逆転写q-PCRにより明らかになった。
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