研究課題
プロスタグランジンD2受容体CRTH2は、末梢炎症での機能解明が進んでいる分子である。我々は、CRTH2が情動・認知機能障害の発現に関与することを見出し、世界で初めて高次脳機能におけるCRTH2の役割を明らかにした。その後、がん病態モデルなど、複数の病態モデルで認められる情動・認知機能障害に、CRTH2が関わることを明らかにしてきたものの、CRTH2による神経機能の調節メカニズムは、未だ不明である。そこで、本年度は、炎症病態のモデル動物で認められる認知機能障害へのCRTH2の関与および、CRTH2シグナルが関与する神経活性の調節メカニズムの詳細を明らかにすることを目的した。がん病態モデル動物で認められる認知機能障害に、CRTH2拮抗薬が与える影響を評価したところ、CRTH2拮抗薬は障害を改善しなかった。一方で、2-アラキドノイル酸をアラキドン酸に変換する酵素であるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の拮抗薬は、本モデル動物で認められる情動機能障害の発現を抑制することを明らかにした。これらのことから、がん病態モデル動物で認められる情動機能障害の発現に、MAGL-CRTH2シグナルが選択的に関与する可能性が示された。CRTH2が関与することが報告されている、リポ多糖が誘発する扁桃体中心核における神経活動の亢進に関して、迷走神経の切除は、リポ多糖が誘発するc-Fos陽性細胞数の増加には影響を与えなかった。また、迷走神経の切除を行ったマウスにおいて、CRTH2拮抗薬は、リポ多糖が誘発するc-Fos陽性細胞数の増加を抑制した。これらのことから、リポ多糖による扁桃体中心核における神経活動の亢進は、迷走神経ではなく、脳局所におけるCRTH2シグナルの活性化を介して引き起こされる可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件)
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