研究課題
プロスタグランジン(PG)は生体膜リン脂質からホスホリパーゼによって切り出されたアラキドン酸から、シクロオキシゲナーゼを律速酵素として産生される代表的な生理活性脂質であり、発熱、疼痛、炎症を代表とする様々な生理作用を示す。本研究では、PG受容体による新規脂質代謝調節機構を明らかにすることを目的として、申請者はこれまでに、PGE2受容体EP4の欠損マウスを用いて、EP4受容体による脂肪蓄積の制御機構を解析してきた。EP4受容体欠損マウスは通常食条件下において白色脂肪組織重量亢進の表現型を示す一方、肝臓への脂肪蓄積は少なく、EP4受容体は生体中の脂質分布を制御していると考えられた。今年度は、脂肪組織におけるPGE2産生機構を解析し、関与するホスホリパーゼ/シクロオキシゲナーゼを同定した。また、PGE2産生が誘導される生理的状況を明らかにした。また、EP4受容体の機能を担う責任細胞を同定するため、骨髄移植実験および細胞特異的EP4欠損マウスの作成を行った。EP4受容体欠損マウスの骨髄を野生型マウスに移植しても、EP4受容体欠損マウスでみられた表現型が再現されなかったことから、マクロファージなどの血球系細胞に発現しているEP4受容体は脂肪蓄積制御には寄与しないと考えられた。今後は、作成した細胞特異的EP4欠損マウスの解析により、責任細胞の同定を進めるとともに、EP4作動薬投与実験を行い、脂質異常症の治療標的としてのEP4受容体の可能性を評価する。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、脂肪組織におけるPGE2の産生機構を明らかにするとともに、骨髄移植実験や細胞特異的EP4欠損マウスの作成を行い、EP4受容体機能を担う責任細胞の絞り込みも進捗しているため、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
作成した細胞特異的EP4受容体欠損マウスの解析を進め、EP4受容体機能を担う責任細胞の同定を進める。また、肥満モデルマウスへのEP4作動薬投与を行い、脂質異常症の治療標的としての可能性を評価する。
平成28年4月の熊本地震により、当初使用予定のマイクロアレイ解析機器(共通機器)が破損した。精密機器であったため、その被害状況の把握や復旧に多大な時間を要し、解析を再開できたのは10月となり、約6ヶ月間の研究遅延を余儀なくされたため。
肥満病態マウスモデル作成用のマウス購入費や特殊飼料費、遺伝子発現解析(マイクロアレイ、定量PCR, in situ hybridization)用試薬類などに予算を使用する。
熊本大学大学院生命科学研究部薬学生化学分野ホームページhttp://http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/seika/index.html
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Biochim. Biophys. Acta. Mol. Cell Biol. Lipids.
巻: 1862(6) ページ: 615-622
10.1016/j.bbalip.2017.03.006.