研究課題/領域番号 |
15K18876
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
高栗 郷 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (90623710)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AMAM17 / インスリン抵抗性 / GIPC1 / ERK / IRS-1 |
研究実績の概要 |
ADAM17は、インスリン抵抗性を惹起させるTNF-αのmaturationに関わる細胞膜メタロプロテアーゼである。申請者は、ADAM17の活性制御機構の解明のため、酵母ツーハイブリッド法を行い、ADAM17新規結合タンパク質GAIP/RGS-19-interacting protein (GIPC1)を同定した。HEK細胞の過剰発現系において、ADAM17とGIPC1が結合することが確認された。また、ADAM17の細胞質欠損変異体およびC末端欠損変異体(821E-T-E-C824)を用いた結果から、GIPC1のADAM17との結合には、ADAM17のC末端領域(821E-T-E-C824)が必要であることを明らかにした。 一方、ラットGIPC1をクローニング後、アデノウイルスを作製し、過剰発現下、あるいはsiRNAを用いたGIPC1ノックダウン細胞を用いてインスリン刺激を行ったが、Aktのリン酸化には影響を及ぼさなかった。しかしながら、GIPC1をノックダウンすると、アンギオテンシンⅡによるERKのリン酸化が顕著に抑制されることを明らかにした。ADAM17によって介在されるアンギオテンシンⅡによるERKのリン酸化は、インスリンシグナル伝達障害を惹起させるインスリン受容体基質(IRS-1)のセリンリン酸化の引金となることから、GIPC1はADAM17を介在したインスリンシグナル伝達障害を制御する分子である可能性が示唆された。 また、ADAM17のタンパク発現を誘導することが確認されたinterleukin (IL)-1βの骨格筋細胞におけるインスリンシグナル伝達を検討したところ、IL-1βはGLUT4のトランスロケーションおよびグルコースの取込みを促進することを見出した。このメカニズムとして、AMPKの活性化とGLUT4のタンパク発現の増加が関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GIPC1のクローニングおよびウイルス作製に時間を要し、GIPC1のインスリンシグナル伝達への詳細な機能解析を行えなかった。また、もう1つの課題であった小胞体ストレスによるADAM17の活性化機構について、より詳細に解析を続ける必要があるため、研究の達成度としては遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
アンギオテンシンⅡやエンドセリン-1などによるインスリンシグナル伝達障害におけるADAM17結合タンパク質GIPC1の役割を明らかにするために、より詳細な解析を行う。また、小胞体ストレスによるインスリンシグナル伝達障害に対するADAM17の関与についても引き続き解析を進める。
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