骨格筋における細胞膜メタロプロテアーゼADAM17の発現増加が、エンドセリン-1によるインスリン情報伝達抑制をさらに亢進させたことから、ADAM17の活性化および発現増加がインスリン抵抗性を惹起する可能性が示唆された。そのため、ADAM17の活性制御機構を明らかにするため、酵母ツーハイブリッド法を行い、ADAM17の新規結合タンパク質として、GAIP-interacting protein C terminus (GIPC)1を同定し、その結合にはADAM17のC末端領域(821E-T-T-C824)が必須であることを明らかにした。ADAM17の活性化制御にGIPC1が関与しているのかを検討するため、ADAM17により切断されるHB-EGF (heparin-binding epidermal growth factor)-AP(Alkaline phosphatase)の安定発現株にGIPC1を過剰発現すると、ホルボールエステル(TPA)およびangiotensin IIによるHB-EGF-APの切断をさらに亢進させた。これらの結果から、GIPC1は、TPAおよびangiotensin II刺激によるHB-EGF切断に関与しており、ADAM17の活性化を正に制御することが示唆された。GIPC1に対するアデノウイルスを用いた過剰発現、あるいはsiRNAを用いたノックダウンの実験から、インスリン単独刺激による細胞内情報伝達系には影響を及ぼさなかったが、angiotensin IIによるインスリン受容体基質(IRS)-1のチロシンリン酸化抑制は、GIPC1ノックダウンにより部分的に解除された。これには、IRS-1のチロシンリン酸化抑制に関わるangiotensin IIによるERKのリン酸化およびIRS-1のセリンリン酸化抑制が関与していた。
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