研究実績の概要 |
前年度の研究に引き続き、ラットグリオーマ腫由来細胞株であるC6グリオーマ細胞において、細胞間隙のカリウムイオン濃度調節に関わると考えられるKir4.1, 4.2, 5.1チャネルの他、Kir2.1およびNa+/K+ ATPase のタンパク質発現量を検討した。その結果、Na+/K+ ATPaseの高い発現が認められたが、Kir2.1, 4.1, 4.2, 5.1の発現は認められたものの総じて低レベルであった。この結果を踏まえ、このC6グリオーマ細胞のdbcAMPによる分化誘導処置を試み、各Kirチャネルの発現量の変化を検討した。1mM dbcMAP添加1% FBS/DMEMで 0.5, 1, 3, 6, 24, 48時間と時間経過を追って培養したところ、分化誘導24時間以降からWestern blot法によりGFAPの強い発現が認められたことから、アストログリア様細胞に分化誘導されたことが確認できた。この結果を踏まえ、分化誘導条件での培養後における各種 Kirチャネルおよび Na+/K+ ATPase のタンパク質の発現変化をWesterun blot法で確認したところ、分化誘導24時間以降からKir4.1の強い発現上昇が認められた。このことから、C6グリオーマ細胞の分化誘導とKir4.1チャネルの発現上昇との相関関係が示唆された。更に、この分化誘導条件において、グルココルチコイドホルモンであるコルチコステロンを添加したところ、分化誘導によるKir4.1の発現上昇の抑制が認められた。以上の事から、グルココルチコイドホルモンがC6グリオーマの分化によって得られたアストログリア様細胞に発現する一部のKirチャネルの発現量に影響を及ぼすことが示唆された。
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