研究実績の概要 |
前年度に確立したC6グリオーマの分化誘導条件を元に、本年度はC6グリオーマ分化誘導前および誘導後における電気生理学的手法による内向き整流性カリウムチャネル電流の測定を試みた。測定には、細胞外液として150mM NaCl, 5.4mM KCl, 1.8mM CaCl2, 1.2mM MgCl2, 10mM d-glucose, 10mM HEPES (pH7.4) を、電極内液として 140mM KCl, 1mM MgCl2, 5mM EGTA, 4mM MgATP, 10mM HEPES (pH7.2) を用いた。測定条件として、静止膜電位を-50mVに設定し、-130mVから-20mVまで、10mVずつステップパルスを与えた。分化誘導前のC6グリオーマでは、内向き整流性カリウムチャネル由来の電流は認められなかったものの、4-Aminopyridine (4-AP)の投与により抑制される電位依存性カリウムチャネル由来と考えられる外向きの電流が認められた。まず、生化学実験による結果を元に、分化誘導3日後のC6グリオーマにおいてカリウムチャネル電流を測定したところ、外向きの電流は観察されたが、内向き整流性カリウムチャネル由来の電流は観察されなかった。続いて、分化誘導5日後のC6グリオーマでは外向きの電流の他、強い過分極刺激時より内向き電流が認められ、これは4-APの投与により抑制されなかったことから、内向き整流性カリウムチャネル由来の電流であることが示唆された。これに対し、C6グリオーマの分化誘導時にグルココルチコイドであるコルチコステロン (100μM) を同時投与したところ、内向き電流は認められなかった。以上の結果から、コルチコステロンにより、分化誘導されたC6グリオーマにおけるカリウムチャネルの電気生理学的性質が変化することを明らかにした。
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