本年度は、C6グリオーマにおけるパッチクランプ法による内向き整流性カリウムチャネル電流測定に加え、カリウムイオン蛍光プローブであるAsante Potassium Green-2(APG-2)を用いたカリウムイオン流入の可視化を試みた。前年度の実験では、分化誘導5日後のC6グリオーマでは外向きの電流の他、強い過分極刺激時より内向き電流が認められた。また、分化誘導開始時にコルチコステロン (100 μM) を添加したところ、内向き電流は認められなかった。しかし、実験を進めて行くにつれて内向き電流発生頻度ならびに電流振幅が小さくなり、同条件を用いて内向き電流発生の再現性を試みたものの、内向き電流の発生が認められなくなった。これは、一昨年度に生化学実験によって明らかにした長期の継代培養によるC6グリオーマの分化誘導効果の低下のパターンとも異なっていた。一方、APG-2を用いたカリウム流入を可視化した試みでは、C6グリオーマ分化誘導前および誘導後の培地中に40 mM KClを加え、細胞内におけるAPG-2シグナルを蛍光顕微鏡下で観察、比較した。その結果、分化誘導前の細胞と比べ、誘導後の細胞において細胞内でのAPG-2由来蛍光シグナルの増大が観察された。しかし、予想に反し、分化誘導開始時にコルチコステロン (100 μM) を添加した細胞におおける細胞内APG-2由来蛍光シグナルの減少傾向は認められなかった。現在、電気生理学実験におけるC6グリオーマ分化誘導条件の再確立およびAPG-2によるカリウムイオン流入可視化条件の確立を試みている。
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