研究実績の概要 |
抗がん剤の副作用の1つである疲労感/倦怠感は、治療中だけでなく治療が終了したあとで も長期間持続し、患者のquality oflife (QOL)を著しく低下させる。しかしながら、抗がん剤による疲労感/倦怠感の発症機序は未だ解明されていない。申請者らはこれまで、主要な抗がん剤の1つであるシスプラチンによる疲労感/倦怠感の発現に骨格筋萎縮が関与することを明らかにした。そこで本研究では、臨床上問題となる疲労感/倦怠感を発症する抗がん剤のシスプラチン、パクリタキセル、イリノテカン等による筋萎縮作用に焦点をあて、検討を行っている。本年度は、シスプラチンによる筋萎縮時における gene expression profiling を DNA microarray にて解析した結果、筋萎縮原因遺伝子である MuRF1 および Atrogin-1 (MAFbx) だけでなくpathway 解析の結果、proteasome degradation pathway の一部である 26s proteasome の構成分子(Psma1, Psma3, Psma4, Psma5, Psma7, Psmb4, Psmc2, Psmc4, Psmc6, Psmd3 等)の遺伝子発現増加、ならびに、横紋筋収縮 pathway 因子である tropomyosin3、tropomyosin-T1、troponin-I1、alpha-actin1 および 2、myosin light chain2, 3 等の遺伝子発現低下が引き起こされていることを明らかにした。したがって、シスプラチンンは、骨格筋細胞内において MuRF1 ならびに Atrogin-1 (muscle-specific E3 ligase) を介した 26s proteasome によるタンパク質分解機序の亢進および横紋筋収縮因子の発現低下が引き起こされ、この状況を介して疲労感/倦怠感を惹起している可能性が示唆できた。
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