研究課題
厚生労働省が定める特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)に指定されている肺動脈性肺高血圧症は、肺血管の障害によって肺血管抵抗が上昇し、慢性的に肺動脈圧が上昇する致死性の血管疾患である。我々は、肺動脈平滑筋に発現して細胞外のカルシウム濃度を感知するカルシウム感受性受容体(CaSR)の発現増加および機能増強が、肺動脈性肺高血圧症の病態機構に関与していることを明らかにした。本研究では、肺動脈性肺高血圧症に対するCaSR拮抗薬の有効性を証明することを目指した。実験材料として、正常ヒト(Normal)と特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)患者由来の培養肺動脈平滑筋細胞(PASMCs)株を用いた。IPAH-PASMCsにCaSR拮抗薬であるNPS2143やCalhex 231を投与すると、その細胞増殖は濃度依存的に抑制された。次に、肺動脈性肺高血圧症治療薬として使用されているホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬との併用効果を解析した。PDE5阻害薬であるシルデナフィルは、IPAH-PASMCsの過剰な細胞増殖を濃度依存的に抑制した。IPAH-PASMCsにNPS2143やCalhex 231をシルデナフィルとともに投与すると、その過剰な細胞増殖は相加・相乗的に抑制された。以上より、IPAH患者におけるPASMCsの過剰な細胞増殖を介した肺血管リモデリングが、CaSR活性によって制御されていることを薬理学的に証明した。さらに、PDE5活性の阻害に加えて、CaSR活性も同時に阻害することで、より効果的な細胞増殖抑制効果を期待できることも薬理学的に証明された。本研究成果は、CaSR拮抗薬の単独使用、およびPDE5阻害薬との併用が、肺動脈性肺高血圧症の新規治療法として有用であることを示唆している。
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