本年度は、butyrate誘起過敏性症候群モデルマウスにおける結腸伸展刺激により、知覚神経の興奮が認められるかについて検討を行い、さらに、Cav3.2ノックアウトマウスを用いてbutyrate誘起過敏性症候群モデルマウスにおけるいたみが消失するか検討した。 ddY系マウスにおいて、butyrateを反復結腸内投与したところ、関連痛覚過敏が認められた。Butyrate投与開始 6日後に、高容量の水結腸内投与により結腸伸展刺激を与えたところ、結腸からの神経が多く入力するT13-L1およびL5-S1レベルの脊髄において後角表層に神経興奮のマーカーであるリン酸化ERKの発現が認められた。次に、Cav3.2ノックアウトマウスおよび野生型 (C57BL/6) マウスにbutyrateを反復結腸内投与したところ、野生型マウスでは、関連通貨過敏が発現し、Cav3.2ノックアウトマウスでは認められなかった。さらに、高容量の水を結腸内投与し、結腸伸展刺激を与えたところ、butyrate処置後の野生型マウスでは結腸痛様行動の増加が認められたが、Cav3.2ノックアウトマウスではみられなかった。 以上の結果から、butyrate誘起関連痛覚過敏および結腸伸展刺激による結腸痛様行動の発現にCav3.2が関与することが明らかとなり、Cav3.2を標的とする薬物が過敏性腸症候群で認められる結腸痛の新たな治療薬となりうる可能性が示唆された。
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