抗菌活性天然物質を素材とした眼科領域感染症に対する治療薬リードの開発を目指して、抗菌天然物質ライブラリーの作成、拡充ならびに活性評価を行った。 国内外で採集した植物について、抽出エキスの作成、各種クロマトグラフィーを用いた含有成分の探索ならびに同定を行った。新規化合物については、NMRスペクトルやMSを中心としたスペクトル解析などにより、化学構造を明らかにした。具体的には、北海道産のオトギリソウ科植物エゾオトギリと徳島県産のオトギリソウよりそれぞれ新規アシルフロログルシノール誘導体を、徳島県で栽培したオトギリソウ科植物カンムリオトギリ、ビヨウヤナギ、およびキンシバイからメロテルペノイドに分類される新規化合物を単離し、化学構造を明らかにした。国産のフトモモ科植物からは、アシルフロログルシノールとフラボノイド配糖体の複合構造をもつ新規化合物を単離した。さらに、中国ならびにモンゴル産のリンドウ科植物より新規イリドイド配糖体と新規キサントン配糖体を、バングラデシュ産のテリハボク科植物とセンダン科植物から、それぞれ新規フェニルクマリン類と新規ジテルペノイドを単離した。 一方、沖縄県産の海綿動物から含臭素アルカロイドやジテルペノイドの探索を行った。 これらの新規化合物のうち、アシルフロログルシノール誘導体のyezo'otogirin Eやadotogirin、メロテルペノイドのhypatulin Aなどが抗菌活性を示すことを明らかにした。特に、hypatulin Aは高度に置換された三環性骨格をもつユニークな化学構造を有する化合物である。
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