研究課題/領域番号 |
15K18886
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
浅野 孝 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (10552888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒガンバナアルカロイド / 植物内生菌 / 植物共生 / アルカロイド生物合成 / LCMS-IT-TOF |
研究実績の概要 |
本研究課題の昨年度までの成果として、ヒガンバナ科植物について毛状根誘導方法の確立に成功しているが、ヒガンバナ科植物の毛状根は誘導効率が低く、生長が極めて遅いため、アルカロイド生物合成システムとしては最良と言い難い点が問題であった。そこで本年度、毛状根等の植物細胞系に代わる新たなアルカロイド生物合成システムとして、ヒガンバナアルカロイド生産植物内生菌の探索を行った。 Narcissus bulbocodiumの球根りん片を中性洗剤希釈液にて洗浄後、70%エタノールで1分間、5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で5分間、さらに70%エタノールで30秒間の順序で殺菌処理を行った。殺菌したりん片から1cm四方の切片を得て、水ゲルライト培地(1.5%ゲルライト)に置床し、30℃、暗所下で培養した。その結果、約40日後に1切片から菌体を分離させることができた。得られた菌体を、クロラムフェニコール含有ポテトデキストロース寒天培地に移植し、30℃、暗所下にて継代培養を行なった。次に、菌体をポテトデキストロース液体培地に移植し、28℃、200rpmで4日間振盪培養した後、菌体のみを収穫し、70%エタノールを用いて成分抽出を行なった。得られた抽出液を精密質量が測定可能なLCMS-IT-TOFを用いて分析した結果、Galanthamineと同じ精密質量を持つが、保持時間が異なるピークを検出することができた。次年度、このN. bulbocodium内生菌をN. bulbocodium無菌植物体に接種して共生培養させることにより、無菌植物体におけるアルカロイド生産の変動を解析すると共に、アルカロイド生産と相関して発現変動する遺伝子の絞り込みを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにヒガンバナ科植物形質転換体として毛状根誘導方法の確立に成功しているが、生長が遅い点等が問題になっていた。そこで本年度、毛状根とは異なる新たなアルカロイド生物合成システムとして、ヒガンバナアルカロイドを生産する植物内生菌の単離に着手した。次年度、得られたアルカロイド生産植物内生菌を無菌植物に接種して共生させることにより、植物におけるアルカロイドの代謝改変と効率的なアルカロイド生物合成システムが共に実現できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度単離に成功したヒガンバナアルカロイド生産植物内生菌をヒガンバナ科無菌植物に接種して共生的に培養させることにより、アルカロイド生産が変動する共生培養系を確立し、遺伝子発現との相関を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表するための論文投稿並びに英文校閲を本年度行う予定であったが、次年度に持ち越しとなった。また、アルカロイド定量及び遺伝子発現解析に際し必要となる物品の発注の一部が次年度に持ち越された。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿料及び英文校閲費用に使用する。また、アルカロイド定量及び遺伝子発現解析に際し必要となる物品の購入を行う。
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