研究課題/領域番号 |
15K18887
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
中村 亮介 北里大学, 薬学部, 助教 (50383659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗メチル水銀薬 / サポニン化合物 |
研究実績の概要 |
本研究は、生薬由来の化合物からメチル水銀(MeHg)毒性を抑制する効果があるものを見出すことを目的としている。 初年度である本年度はまず、以前の検討によりMeHg毒性抑制効果が認められたSA003の毒性抑制作用についてin vivoで解析した。マウスにSA003をMeHg投与の1時間前に経口投与したのち、MeHgに関して、中毒症状を起こしうる高濃度ばく露群、および環境中より摂取しうる低濃度ばく露群を設定し、それぞれ週5回4週間経口投与した。投与期間後に解剖し、肝臓、腎臓中水銀蓄積量およびMeHgによる毒性の指標として脳内炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6)量を測定した。いずれのMeHgばく露群においてもSA003投与により肝臓、腎臓中水銀蓄積量が減少する傾向が認められ、特に低濃度MeHgばく露群においてSA003投与により肝臓、腎臓中水銀蓄積量が有意に減少した。さらに、脳内IL-1β、IL-6量はMeHgばく露量に依存して増加する傾向が認められたが、SA003投与によりこれらサイトカインの上昇が有意に抑えられた。以上より、SA003はMeHgの生体内への蓄積を抑制することで毒性の発現を抑える可能性が示唆された。 また、MeHgの腸管からの吸収への影響を想定し、腸管上皮細胞Caco-2を用いて細胞生存率を指標に生薬由来化合物の抗MeHg活性に関してスクリーニングしたところ、抗MeHg薬の候補化合物としてサポニン化合物SA006を見出した。 現在、SA003に関してMeHg毒性抑制作用のメカニズムの検討、SA006に関してin vivoにおけるMeHg毒性抑制効果の検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はin vitro において抗MeHg作用が認められているSA003の、in vivoにおけるMeHg毒性抑制効果の検証および、抗MeHg薬を目的としたin vitroにおける生薬由来化合物のスクリーニングを行った。 いずれも概ね計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、in vivoにおいても抗MeHg作用が認められたSA003に関して、その作用機序の解析を行う。SA003はMeHgの腸管細胞内への取り込みを抑制することが示唆されたため、まずSA003の腸管からのMeHg抗MeHg吸収への影響に関して解析する。 並行して、新たに抗MeHg作用が認められたSA006に関して、MeHgとともにマウスに投与することでin vivoにおける作用を検証する。さらにin vivoにおいて解毒作用のある化合物について、その作用メカニズムの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の消耗品に関して当初予定していた価格より安価に購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、本年度にin vivoにおいて抗MeHg効果の認められた化合物の作用メカニズムの解明および、本年度の研究で見いだされた新たな抗MeHg薬となりうる化合物に関して、in vivoにてその効果の検証を主として行う。そのため、細胞培養用の試薬、器具や、実験動物・資材が主たる購入品目である。また、平成28年度は本研究課題の最終年度となるため、成果発表のための国内旅費や論文投稿にかかわる校正費用などが必要となると考えられる。
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