研究実績の概要 |
放線菌Actinoallomurus fulvus K09-0307が生産する抗トリパノソーマ活性物質actinoallolideの生合成遺伝子を改変させ、肝ミクロソームでの代謝を受けにくく、抗トリパノソーマ原虫薬として発展可能なactinoallolide類縁体の合成を目的に研究を行った。 初めに、actinoallolide生合成遺伝子クラスターの遺伝子欠損株作製のため、プロトプラスト法及び接合伝達法を用いてK09-0307株へのベクター導入を試みたが、いずれの方法でもベクターが導入された株は得られなかった。K09-0307株の遺伝子組換えは困難であると判断したため、actinoallolide生合成遺伝子クラスターの異種発現を検討した。K09-0307のゲノムシークエンスから推定したactinoallolide生合成遺伝子クラスターを含むベクターを構築し、接合伝達により異種発現用宿主(Streptomyces lividans TK24, S. coelicolor M1152およびS. albus J1074)に導入した。遺伝子クラスター導入株を液体培地で培養し、LCMSで培養液を解析したが、いずれの培養液からもactinoallolideを検出できなかった。導入した遺伝子クラスターが転写されていないことが考えられたため、ポリケチド合成酵素の上流にプロモーターを挿入したベクターを構築し、接合伝達により異種発現用宿主に導入した。再構築したベクターを導入した株の培養液をLCMSで解析した結果、actinoallolide Aの生産が確認された。以上の結果より、actinoallolide生合成遺伝子クラスターをベクターにクローニングでき、異種発現に成功した。 今後はベクター上の遺伝子を改変させ、異種発現による類縁体取得を目指す。
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