研究課題
セッコク属植物のアジアグループ210種、オーストラリアグループ150種に関して、ribosomal DNAのInternal transcribed spacer領域およびmaturaseK遺伝子領域を用いた分子系統解析を実施し、明らかとなった類縁関係および形態学的特徴から、まず、アジアグループの11種、オーストラリアグループの8種を解析対象の典型種(分類群の特徴を示した代表とする種)として選抜した。典型種の茎を採取してエキス抽出を行い、フォトダイオードアレイ検出器を備えた逆相HPLCで分析を行った。各HPLCピークの保持時間および紫外吸収スペクトルを異なる植物間で比較し、28種のセッコク属植物に関して、HPLCプロファイルを作成した。多変量解析ソフトウェアSIMCAを用いて、HPLCプロファイルを変数として、クラスター分析およびOPLS-DAを実施した。その結果、オーストラリアグループの一部の近縁グループに特徴的に検出される成分ピークを見出した。また、生薬「石斛」の基原植物の一部に共通に検出される成分ピークもあり、現在、単離・構造決定を進めている。また、典型種の80%メタノールエキスは、液-液抽出法を用いて、ヘキサン画分、酢酸エチル画分、水画分に分けた。6種のヘキサン画分および酢酸エチル画分に関して、マクロファージ細胞株Raw264.7細胞を用いた一酸化窒素産生抑制試験を実施した。その結果、薬用種として認識されていないD. uniflorumは、生薬「石斛」の基原植物D. nobileおよびD. hercoglossumよりも高い活性値を示し、潜在的薬用資源としての可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
大規模な遺伝子塩基配列の系統解析を実施し、セッコク属植物の類縁関係を把握した上で、典型種を選抜することができた。また、HPLCプロファイルを構築したことで、セッコク属植物の化学的多様性の一端を明らかにすることができた。また、選抜した典型種の液-液抽出を行い、ヘキサン画分および酢酸エチル画分を得た。そのエキスの一部に関して、平成28年度以降に実施を計画していた生理活性試験(抗炎症活性)も実施し、潜在的薬用資源のスクリーニングに着手しており、実験計画はおおむね順調に進んでいる。
平成28年度はHPLCプロファイルへのデータ追加を行うとともに、典型種のエキスに関して、引き続き抗炎症活性試験、さらに抗菌活性、抗酸化活性試験を実施する。抗炎症活性試験で高い活性を示したエキスに関しては、処理した細胞よりRNAを抽出し、炎症性サイトカインのmRNAの発現量を定量RT-PCRにより測定する。抗菌活性では、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、さらに他の微生物に対するエキスの影響を試験する。また、DPPH法を用いた抗酸化活性を実施する。上記の生理活性試験の結果から、活性値の高い種に関しては、その遺伝的近縁種に関しても生理活性試験を実施する。
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