研究課題/領域番号 |
15K18893
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
岩岡 恵実子 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (60411980)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トウキ / 品質評価法 / 駆お血作用 / HPLC |
研究実績の概要 |
高品質なトウキの栽培に必須である“簡便かつ薬効を伴う真の品質評価法”の確立を目的とし、様々な種および異なる産地、育成条件で栽培されたトウキについて各々の駆お血作用をin vivoアッセイ法で評価し、駆お血活性とHPLCによる網羅的な成分分析により得られたパターンとの相関性の解明を目指した検討を行った。 1. 各種トウキサンプルの入手:今年度は、兵庫県で栽培し、乾燥した大和種のトウキおよび局方品として市場に流通している大和トウキと北海トウキを入手し、それぞれ20gから1180mg、1350mg、890mgのメタノールエキスを得た。 2. in vivoアッセイ法を用いた駆お血活性の評価:感作マウスはお血の病態の一つと考えられる末梢血液循環障害を引き起こすことから、このマウスの末梢血流量低下を指標としたアッセイ法を用いて、兵庫県産トウキ(大和種)エキス、大和トウキエキスおよび北海トウキエキスの駆お血活性の評価を行った。その結果、いずれも感作マウスの末梢血液循環障害を改善したが、兵庫県産トウキに関してはやや改善効果が低い結果を得た。 3. HPLCによる網羅的成分分析:まず、大和トウキのエキスを用いて、含有成分が網羅的に確認できるHPLC分析条件を検討し決定した。次に先の各種トウキエキスについて成分分析を行ったところ、各エキス中の主成分リグスチリドの含有量は、それぞれ兵庫県産トウキ(大和種)2.4%、大和トウキ0.9%、北海トウキ1.9%であった。活性試験の結果と考え合わせると、リグスチリド以外にも活性に関与する化合物があることが示唆された。そこで、他の含有成分について比較検討したところ、リグスチリドと同じく含有量の高いキサントトキシンも大きな含有量の差はみられなかったが、その他多数の微少成分について大和トウキおよび北海トウキで含有量の増加を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感作マウスの血流量低下が再現性よく確認できるようになり、駆お血活性評価が可能となった。また、HPLCの分析条件を確立した上で、各種トウキエキスについて網羅的な成分分析を行い、分析パターン(フィンガープリント)を得た。主成分であるリグスチリドやキサントトキシンの含有量に駆お血活性との相関が明確に認められなかったことから、微少成分も含めた分析パターンとそれぞれの薬効の相関性について検討し、薬効と相関するHPLC分析パターンを見出せば、簡便な薬効を伴う品質評価法の確立が可能となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
活性試験と成分分析の相関を検討するにはまだまだサンプル数が少ないことから、さらに各種栽培条件などの異なるトウキを入手し、これまでと同様に、HPLCを用いた成分分析と駆お血活性試験を並行して行う。成分分析に関しては、各種条件における微少成分を含めた含有成分の相対的な含有量変化などの多次元データを主成分分析することで情報を縮約、視覚化し、活性結果との相関について解析を行う。 また、今回最も改善効果が高かった大和トウキエキスをHPLCにより分画し、駆お血in vivoアッセイ法を用いて活性画分を見出し、そのHPLC分析パターンを明らかにする。さらに活性を指標に各種クロマトグラフィーを繰り返し、活性成分の単離を試みる。 試験的ではあるが、掘り出し後の調整法の違いにより含有成分の相対的な含有量が異なる傾向がみられたことから、湯もみの温度や時間を変えたサンプルを入手し、HPLC分析パターンの変動を確認し、その駆お血活性についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
駆お血in vivoアッセイ法が再現性よく実施可能となったのが年度末近くであり、それに付随する購入予定であった消耗品や実験動物の購入が平成28年度に一部繰越になったため次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は上記繰越となった消耗品等を購入し、適切に執行を行う。さらに、HPLC分析に必要なクロマトカラムや溶媒、ガラス器具、引き続きアッセイに必要な各種消耗品や実験動物、試薬を購入する。活性本体の解明も行う予定であり、それに必要なクロマト担体やガラス器具、溶媒も購入予定である。また、研究成果の発信のため学会での発表や情報収集を行う予定である。
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