近年、日本国内での産地確立を目指し、全国各地で薬用作物が栽培されている。しかし、このような天然の薬用作物は産地や栽培条件で薬効成分の含有率が変わることが知られており、薬用部位における薬効成分の含有量を確認する必要がある。しかし、トウキのように、その薬用作物において代表的な指標となる成分が必ずしも薬効を担保するとは限らない薬用作物も多く存在する。そこで、さまざまな栽培地や調整法の異なるトウキ(当帰:セリ科Angelica acutiloba Kitagawa又はA.acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikinoの根)について、網羅的な含有成分のパターン分析を行い、主要ピークの化合物の同定を試みた。また、得られた分析パターンを駆お血活性試験の結果と比較することにより、含有成分と薬効の相関性について検討した。まずは実際に漢方薬を湯液療法で服用する際には熱水抽出をすることから、疎水性の高いligustilideの熱水中への抽出率をHPLCで確認した結果、ligustilideの含有は認められたものの、非常に少量であることが確認できた。さらに、得られた各トウキMeOHエキスの網羅的なHPLC分析パターンでみられる大きなピークは、主要成分であるligustilideやxanthotoxinであることを確認し、栽培地や調整法の違いによりこれらの含有量が異なる事が明らかとなった。また、これら主要成分以外にadenosineを含むことも確認した。また、adenosineは虚血性疾患治療薬として使用されるが、本研究におけるin vivo駆お血活性試験法でも有意な末梢静脈微小循環血流量の改善が認められたことから、トウキの末梢血流量改善効果に関与している可能性が示唆された。
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