近年、生薬や天然物医薬品の基原鑑別において、DNA鑑別の手法が用いられるようになってきたが、データベースに登録された配列の正確性は保証されておらず、形態学的に正しく同定された基原植物のDNA情報の収集が求められている。本研究では、高知県立牧野植物園の協力のもと、生薬の基原植物種およびその近縁種のさく葉標本の提供を受け、そのDNAから複数領域の塩基配列情報を取得して、分子系統学的解析を行う。 昨年度取得したBupleurum属植物の核ITS領域のDNA配列情報を用いて分子系統学的解析を行った結果、最尤法及び最大節約法において植物種のクラスターを確認することができた。さらに、本年度は、新たにCoptis属植物のさく葉標本90検体を入手し、実験プロトコールに従いDNA抽出と配列情報の取得に取り組んだ。 研究全体を通して、Cimicifuga属及びActaea属、Bupleurum属、Coptis属という重要生薬の基原種とその近縁種について、形態学的鑑別を経たさく葉標本のDNA情報を得るとともに、GenBankデータベースに既収載の配列情報との比較を行った。本研究成果により、薬用植物のDNA鑑別に資するプラットフォームの基礎を築くことができた。今後、得られた配列の登録を進め、関連分野の研究者との情報共有に努めたい。
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