研究課題/領域番号 |
15K18901
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
今井 耕平 昭和大学, 薬学部, ポストドクター (00634560)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗酸化剤 / 放射線がん治療 / 活性酸素種 / Stopped flow / ケルセチン / 有機化学 / 電子移動反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射線がん治療で問題となる副作用軽減のための活性酸素種(ROS)消去剤の開発を行い、放射線がん治療で併用できる薬剤の開発を目的とする。放射線治療で発生させるヒドロキシラジカルをがん細胞で発生量を維持し、正常細胞で消去する生体内の環境変化によってラジカル消去活性が増減する新規抗酸化剤として、ケルセチン骨格の3位のヒドロキシ基をアミノ基に変えたアミノケルセチン誘導体(AQ)を分子設計した。合成は短い工程で効率的に行うためにケルセチンの配糖体のルチンを出発物質として行い5工程でAQを得た。得られたAQの吸収スペクトルを酸性条件下と中性条件下で比較すると、酸性条件下の方が極大吸収波長がレッドシフトした。AQのラジカル消去活性をStopped flow法によって測定した。中性条件下でケルセチンとAQのラジカル消去活性を比較すると、AQのラジカル消去活性はケルセチンよりも27倍の活性値を示した。またAQのラジカル消去活性を酸性条件下と中性条件下で比較すると、酸性条件下のラジカル消去活性は、中性条件下よりも1/10に低下した。これは、電子供与基をケルセチンに導入するとラジカル消去活性が増強するこれまでの成果から考察するとAQのアミノ基が酸性条件下でカチオン化され、電子供与効果から電子求引効果へ変わったためと考えられる。以上の結果を2016年3月に行われた日本薬学会で発表した。現在、量研機構・放射線医学総合研究所と共同で化合物の開発を行っており、今後も継続して研究を展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、量研機構・放射線医学総合研究所との共同研究でアミノケルセチン誘導体(AQ)の合成とそのラジカル消去活性を明らかにした。研究計画で予測した酸性条件下でラジカル消去活性が低下したことは予想通りであり、実験はおおむね順調に進んでいる。得られた結果は、学会で報告し、学術雑誌への投稿を予定しているため、進捗はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はAQを得る収率が予想よりも低いため、高収率化の検討とAQがカチオン化するpHを明らかにする。酸性条件下と中性条件下で、実際に細胞に放射線を照射し、その防護機能を明らかにする。また、酸性条件下でラジカル消去活性が減少したAQと同様に、カチオン化するpHが異なる抗酸化剤の開発として、導入するアミノ基を変えた誘導体を設計・合成を行い、がん細胞pHでラジカル消去活性が変化する抗酸化剤を開発する。具体的には、アミノ基の導入箇所の検討や、ジメチルアミンやジエチルアミンなどのアミノ基を変更した誘導体の合成に着手する。得られた誘導体から順次、ラジカル消去活性を明らかにする。今年度も引き続き、量研機構・放射線医学総合研究所と協力して研究を進めていく。 得られた結果は、国内外の学会で発表し、学術誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラジカル消去活性が増減するアミノアクリジンAQの合成が予定よりもスムーズに進み、反応の検討が少なくなり、予定していた購入する試薬の量が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、アミノケルセチンのアミノ基を変えた誘導体及び、アミノ基の導入箇所が異なる誘導体の合成を行い、それぞれのラジカル消去活性と放射線照射による細胞防護効果を明らかにする。そのために必要な、ガラス器具、試薬などの消耗品を購入する。11月にサンフランシスコで開催されるSociety for Free Radical Biology and Medicine (SFRBM)や8月に開催される日本酸化ストレス学会学術集会などの学会で発表するための旅費と参加費に使用する。
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