研究課題/領域番号 |
15K18902
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小林 数也 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80647868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / BACE1 / 低分子阻害剤 / アミジノ基 / ピロリジン / ピペリジン |
研究実績の概要 |
申請者は、アルツハイマー病根本治療薬の開発を最終目標として、新規低分子βセクレターゼ(BACE1)阻害剤の開発に着手した。本年度は、研究実施計画に基づき(1) アミジノピロリジン型BACE1阻害剤の開発研究と、(2) アミジノピペリジン型BACE1阻害剤の開発研究を行った。 (1) アミジノピロリジン型BACE1阻害剤の開発では、ヒドロキシプロリンを出発原料として、(a) カルボン酸へのアミンの縮合によるR1基の導入、(b) 光延反応を用いた水酸基へのR2基の導入、(c) 環上窒素原子へのアミジノ基の導入、の3段階の工程によりR1、R2が異なるいくつかの誘導体を合成した。また、出発原料のD-ヒドロキシプロリンへの変更や、光延反応による水酸基の立体反転を行うことで、立体配置の異なるジアステレオマー/エナンチオマーの合成も行った。続いて、得られた誘導体のBACE1阻害活性を評価したところ、R1、R2にかさ高い置換基を導入した誘導体が弱いながらもBACE1阻害活性を示すことを見出した。 (2) アミジノピペリジン型BACE1阻害剤の開発では、アラニンを出発原料として誘導した環化前駆体に対して、所属研究室で開発したPd触媒を用いたジアステレオ選択的環化反応を用いて2,6-cis-二置換ピペリジン骨格の構築を行い、環上窒素原子へのアミジノ基の導入、及び側鎖への置換基の導入を行うことで各種誘導体を合成した。また、合成法を変更することで2,6-trans-二置換ピペリジン骨格の構築にも成功している。これまでに得られた誘導体では十分なBACE1阻害能を有する化合物は見出せなかったが、各誘導体間で活性の値に差が生じていることから、適切な置換基を選択することができればアミジノピペリジン骨格も有用な母骨格になりうると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究目的」に記載した、(1)「アミジノピロリジン型BACE1阻害剤の開発」については、本年度の研究において弱いながらもBACE1阻害活性を示すアミジノピロリジン骨格を有する誘導体を見出すことに成功した。また、多少制限はあるものの当初予定していた合成法を応用することで、ジアステレオマー/エナンチオマーも含めた各種誘導体の合成が可能であることを見出しているため、更なる構造最適化研究もスムーズに遂行できるものと考えている。 研究目的(2)「アミジノピペリジン型BACE1阻害剤の開発」に関しては、本年度の検討では十分な活性を有する化合物を見出すことは出来なかったが、置換基の構造により誘導体間で活性の差があることを明らかにしており、アミジノピペリジン骨格の新規母骨格としての可能性を示すことができた。また、立体の異なる誘導体の合成法を確立することができたことから、今後はより多様な誘導体合成が可能になるため、更なる高活性化合物の探索を効率的に遂行することができると考えている。 以上の点から、本年度の研究はおおむね順調に進行したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) アミジノピロリジン型BACE1阻害剤の開発研究では、かさ高い疎水性置換基を中心にR1、R2に種々置換基を導入した誘導体を合成し、高活性化合物の探索を進める。また、これと並行して立体の異なる誘導体も合成し、活性評価を行うことで、活性立体配置の同定を行う。100 μM以下のIC50値を示す化合物については、BACE1との共結晶を作成し、X線結晶構造解析を行うことで結合構造を同定する。得られたデータを基に新たな分子設計を行うことで、研究の効率化を図る。 (2) アミジノピペリジン型BACE1阻害剤の開発研究では、(1)の結果を参考にしてかさ高い疎水性置換基を中心に誘導体合成を進め、高活性化合物の探索を行う。ドッキングシミュレーションを用いた結合予測では、cisよりもtrans配置の2,6-二置換ピペリジン骨格のほうがBACE1のポケットに対してよりよい結合を示すことから、2,6-trans-二置換ピペリジン骨格を主軸に誘導体合成を行うことを計画している。 (3) アミジノアザデカリン型BACE1阻害剤の開発研究では、(1)、(2)で得られる置換基構造や距離情報を基にドッキングシミュレーションを組み合わせることで、より効率的な分子設計を行い、新規骨格を有するBACE1阻害剤の開発に取り組む。本項目では、置換基の検討箇所をR1基のみに限定しているため、比較的短い期間で誘導体合成を行うことが可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では、(1) 「アミジノピロリジン型BACE1阻害剤の開発」及び、(2) 「アミジノピペリジン型BACE1阻害剤の開発」の両者において、各種誘導体の合成法の確立を主軸に研究を遂行し、当初予定していたほどの大規模な活性評価試験を行わなかったため、それらに関する支出が抑えられた結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究により確立した合成法を用いて、各種誘導体の合成を行い大規模な活性評価試験を行う。次年度使用額は、当初の予定通りこれら活性評価試験に関する費用として使用する。翌年度分として請求した助成金は、得られた高活性誘導体の構造解析及び、(3) 「アミジノアザデカリン型BACE1阻害剤の開発」のための費用として使用する。
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