昨年までの構造活性相関研究により判明した修飾可能部位にプローブの導入を行い、標的たんぱく質の同定に力を注ぐとともに、In Vitoroで興味深い活性を示した化合物についてマウスを用いたIn Vivo評価系でその活性を評価した。 作用機序解明では、当初、プローブ法を用いて標的たんぱく質を明らかにすべく、様々なプローブを合成し、その中から活性を保持しているプローブをいくつか見出した。しかしながら、それらプローブでは、標的たんぱく質の同定、作用機序解明には至らなかった。そこで、遺伝子発現、蛋白リン酸化の網羅的解析などを行うことにより、本化合物の作用点は、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iであり、その下流のSTAT3リン酸化抑制を誘導することを明らかにした。 Ertredinは、マウス由来のNIH3T3細胞に対して強い活性を示すが、ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞A549細胞に対して活性が低下することが問題であった。合成した誘導体の中からA549細胞評価系においてErtredinを上回る活性を有し、毒性も低い化合物をいくつか見出すことができた。そこで、強い活性を示した5つの化合物について、A549細胞を移植したマウスを用いて、治療実験を行った。本誘導体は、毒性が低いので連投も可能であったが、今回の実験では、連投は行わず、試験期間中2回の投与で活性を評価した。その結果、既存薬と比較すると、投与直後は同程度の活性を示しているが、腫瘍の縮小等は見られず、投与2日後から腫瘍の増大が見られた。患者のQOLを考えると、既存薬より少ない投与回数で、腫瘍縮小あるいは消滅であり、毒性がない薬剤開発が求められていると考えているので、より良い薬剤の開発を目指し、知見を深めていく必要がある。 これまでに得た結果を論文にまとめて投稿の準備を進めている。
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