研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに、水銀トランスポーターとして見出された MerC, MerE, MerF および MerT が無機水銀、フェニル水銀を輸送することを明らかにしていた。さらに平成27年度には、上記の水銀トランスポーターがカドミウムの輸送活性を有することを明らかにした。水銀トランスポーターとして同定された MerC, MerE, MerF および MerT が水銀以外の有害金属を輸送することが明らかになったことから、平成28年度は MerC, MerE, MerF および MerT のヒ素およびクロム輸送活性について検討した。MerC, MerE, MerF あるいは MerT 組換え大腸菌を用いて、亜ヒ酸、ヒ酸およびクロム酸取り込み量を誘導結合プラズマ発光分光分析法 (ICP-AES) により測定した。MerC, MerE, MerF または MerT をもつクローンの亜ヒ酸およびヒ酸取り込み量はコントロールに比べそれぞれ有意に高くなった。また、MerE, MerF または MerT をもつクローンはコントロールとほぼ同等のクロム酸取り込み量を示したが、MerC をもつクローンのクロム酸取り込み量はコントロールに比べ有意に高かった。以上の結果から、MerC, MerE, MerF および MerT はそれぞれ亜ヒ酸およびヒ酸輸送活性を有することが明らかとなった。さらに MerC はクロム酸輸送活性を有すると示唆された。今回得られた知見から、Mer トランスポーターの中で MerC は水銀、カドミウム、ヒ素、クロムなど最も多様な金属輸送活性を持つことが明らかとなった。
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