研究課題/領域番号 |
15K18909
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
佐々木 由香 昭和大学, 薬学部, 助教 (40635108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 接触性皮膚炎 / 皮膚炎 / プロスタサイクリン / プロスタグランジン / PGI2 / PGE2 / PGIS / mPGES-1 |
研究実績の概要 |
平成27年度はプロスタグランジン(PG)最終合成酵素であるプロスタサイクリン合成酵素(PGIS)および膜結合型PGE合成酵素(mPGES)-1の遺伝子欠損(KO)マウスを用いて以下に示す皮膚疾患におけるPG最終合成酵素の役割について解析を行った。 ①TPA (12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate) 誘導皮膚炎:TPAをC57BL/6系マウスの耳介に塗布し、塗布後の耳介の肥厚を測定した。その結果、PGIS KOマウスにおいてもmPGES-1 KOマウスにおいても野生型マウスと比較して同程度の肥厚が認められた。 ②DNFB (dinitrobenzene sulfonic acid) 誘導接触性皮膚炎:DNFBをBalb/c系マウスの腹部に塗布して感作させ、5日後にDNFBを耳介に塗布して接触性皮膚炎を惹起した。野生型マウスではDNFBを耳介に塗布してから2日目をピークとして耳介が肥厚したが、PGIS KOマウスにおいてもmPGES-1 KOマウスにおいても野生型マウスと比較して耳介の肥厚は抑制されていた。 ③DMBA (7,12-dimethylbenz[a]anthracene)/TPA誘導皮膚発がん:DMBA/TPAによって皮膚発がんを惹起したところ、mPGES-1 KOマウスでは野生型マウスと比較して皮膚腫瘍の形成が抑制されたことに対し、PGIS KOマウスでは野生型マウスと同程度の発がんが認められた。しかし、PGIS/mPGES-1両欠損マウスではmPGES-1単独の欠損マウスよりも発がんが促進されており、PGISの欠損は発がんを促進する可能性が示唆された。 上記の解析より、PGIS、mPGES-1ともに接触性皮膚炎には促進的に作用するものの、皮膚発がんにおいてはPGISが抑制的に、mPGES-1が促進的に作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はTPA誘導皮膚炎、DNFB誘導接触性皮膚炎、DMBA/TPA誘導皮膚発がんの3つの疾患モデルを用いてPG最終合成酵素であるPGISおよびmPGES-1の役割について解析を行った。PGISまたはmPGES-1の遺伝子欠損マウスにおける、それぞれの疾患の程度について測定し、組織標本を作製して組織学的にも評価した。さらに、これら疾患モデルにおけるPGISおよびmPGES-1の発現についても解析した。PGISは接触性皮膚炎においても皮膚の発がん部位においても発現が低下していた。一方、mPGES-1はTPAによる皮膚炎、DMBA/TPAによる腫瘍部位において顕著に発現が増加していた。 上記のとおり、平成27年度は計画していた各種皮膚疾患へのPGIS、mPGES-1の関与について明らかとし、疾患部位における発現レベルの変化についても解析を行った。これらの結果より、おおむね順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に各種皮膚疾患とPG最終合成酵素の関連が明らかとなったことをもとに、さらに詳細な解析を行う。まず、各種皮膚疾患におけるPGISおよびmPGES-1の発現部位を免疫組織化学染色によって明らかとする。さらに、組織中のどの細胞に発現しているのかを明らかとするため、白血球やケラチノサイトのマーカータンパク質の抗体を用いて二重染色を行う。また、病変組織に浸潤してきた免疫細胞の細胞数や種類について免疫染色やフローサイトメトリーを用いて解析し、PGISやmPGES-1の欠損によって変化するサイトカイン産生についても、定量的PCRやELISAによって検討する。 次に、今回検討した皮膚疾患に加え、金属アレルギーモデルにおいても同様にPGIS、mPGES-1の欠損によって抑制されるのか、NiCl2を用いて解析する。DNFB誘導接触性皮膚炎と同様に、NiCl2によって感作させた後、耳介にNiCl2を塗布して炎症を惹起し、耳介の肥厚の測定を行う。さらに、組織の病理学的解析、サイトカイン産生についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた各種疾患モデルの解析時に条件検討に用いたマウスの数、試薬が想定よりも少なく抑えられたことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用分は平成28年度に行う金属アレルギーモデルの解析やサイトカイン産生の測定に用いるELISAキットの購入費用に充て、当初の計画よりもさらに詳細な解析を行う予定である。
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