研究実績の概要 |
プロスタグランジン(PG)最終合成酵素であるプロスタサイクリン合成酵素(PGIS)および膜結合型PGE合成酵素(mPGES)-1の遺伝子欠損(KO)マウスを用いて皮膚疾患におけるPG最終合成酵素の役割について解析を行った。 接触性皮膚炎を惹起した際の耳介組織におけるPGIS発現を免疫組織化学染色によって検討したところ、PGISは軟骨組織周辺および血管に発現が認められた。このときの耳介組織におけるPGI2代謝物の6-ketoPGF1a量を測定したところ、PGIS KOマウスでは検出されなかった。また、PGIS KOマウスでは耳介組織中のF4/80(マクロファージマーカー)、CD8a(T細胞マーカー)、CD11c(樹状細胞マーカー)のmRNA発現も抑制されていた。さらに、PGIS KOマウスの骨髄細胞をX線を照射して破壊し、野生型マウスあるいはPGIS KOマウス由来の骨髄細胞を移植したところ、いずれの骨髄細胞を移植しても接触性皮膚炎による耳介の肥厚に差は認められなかった。これらの結果より、骨髄由来細胞以外に発現するPGISによって産生されたPGI2が免疫細胞の遊走を促進し、DNFBによる接触性皮膚炎を促進していることが示唆された。 一方、mPGES-1は表皮および耳介組織に浸潤してきた白血球に発現が認められ、mPGES-1 KOマウスではDNFB塗布による耳介組織中PGE2産生の増加が抑制され、PGD2産生が増加した。 これらの結果より、PGISあるいはmPGES-1の欠損はいずれもDNFB(1-Fluoro-2,4-dinitrobenzene)による接触性皮膚炎を抑制するが、そのメカニズムおよび責任細胞は異なることが示唆された。
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