研究課題/領域番号 |
15K18913
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
山下 琢矢 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (10645203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 危険ドラッグ |
研究実績の概要 |
本研究は実験動物を使用した行動薬理試験に代わる、危険ドラッグをはじめとした乱用薬物の薬物依存性を迅速かつ簡便に評価可能な試験法の確立を目的としている。実験動物を使用しない薬物依存性評価法の構築は実現例がない上、現状の薬物依存性評価を飛躍的に迅速化し得るため、独自性ならびに社会的意義は非常に高い。 本研究のマイルストーンとして、①依存性薬物を曝露したヒト神経細胞から産生される薬物依存性バイオマーカー蛋白質候補をプロテオミクスにより探索し、これを依存性・毒性の有無が判明している化合物で絞り込むこと、および②薬物依存性バイオマーカー蛋白質に対する抗体セットを組み、保有するすべての化合物に対して網羅解析を実施することの2点を設定している。 平成27年度は①を実施した。まず、ヒト神経細胞モデル(SHSY-5Yを分化誘導)にアンフェタミン類、カチノン類、トリプタミン類、およびカンナビノイド類を添加し、細胞死を誘導しない、最大濃度の薬物濃度条件を設定した。次に、上記条件で細胞培養した上清に含有される蛋白質をTCA-アセトン沈殿法により回収し、二次元電気泳動法で分離した。変動蛋白質スポットを切り出してトリプシン処理した後、MALDI-TOF-MS/MSにより蛋白質を同定した。その結果、無処置群と比較して、各薬物処置により変動する蛋白質を複数見出した。現在、薬物依存性が報告されている化合物を使用して各蛋白質の有用性を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、「依存性薬物を曝露したヒト神経細胞から産生される薬物依存性バイオマーカー蛋白質候補をプロテオミクスにより探索し、これを依存性・毒性の有無が判明している化合物で絞り込むこと」を平成27年度に完了予定であった。現在、目標の最終段階である薬物依存性バイオマーカー蛋白質候補の絞り込み段階まで到達している。しかしながら、この絞り込み対象の薬物が多岐にわたるため、再現性良く結果を得るまでに至っていない。従って、自己評価として「(3)やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通り、薬物依存性バイオマーカー蛋白質に対する抗体セットを組み、保有する化合物ライブラリに対して網羅解析を実施する予定である。現在のところ根本的な研究計画の変更は考えていない。まず、計画よりも進行が遅れている点の対応として、平成28年度、新規に大学内に設置された多数のサンプルを同時に前処理可能な装置を使用する。これにより、各サンプル間の処理時間の違いによる変動を最小限に抑えることができ、研究の進展が期待できる。 研究代表者は平成25-26年度若手B採択課題であった、「覚せい剤類似化合物の構造と精神依存性・神経毒性の連関評価」で乱用薬物のマウス脳内プロテオーム解析を実施済である。ここで得られた結果を活用し、in vivoとin vitroでの結果を比較しながら、研究を推進する予定である。
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