研究課題/領域番号 |
15K18917
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
荒木 拓也 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00568248)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DPP-4 / スルフォニルウレア / LDL受容体 / インクレチン |
研究実績の概要 |
1. DPP-4阻害薬およびDPP-4の濃度バランスとインクレチン活性の相関性の評価 糖尿病治療薬の薬効発現に関する個人差および薬剤抵抗性要因の評価を目的として、DPP-4阻害薬およびDPP-4の血中濃度バランスに基づくインクレチン活性の評価に向けた検討を行った。昨年度構築した分析手法を用いて ex vivo での検討を行い、DPP-4およびインクレチン関連物質の分析を行うとともに、関連物質の濃度に関する相関性およびこれらに与えるDPP-4阻害薬の影響を検討した。また既報の技術を用いた際の結果と比較し、両技術による分析結果に差を生じたサンプルについて、その要因を詳細に検討した。本検討の結果については次年度のモデル検証等に応用する。 2. スルフォニルウレアおよびDPP4阻害薬曝露によるLDLRおよびPCSK9発現量の変動解析 スルフォニルウレアに対する薬剤抵抗性発現の主要要因の一つにβ細胞のアポトーシス誘導が挙げられており、β細胞のアポトーシスの誘導にはベータ細胞へのLDLの取り込み更新が大きく関与しているとされている。本研究ではLDLの取り込みに大きく影響するLDL受容体(LDLR)およびLDLRの発現量を制御する PCSK9 の分泌に与えるスルフォニルウレアの影響を評価した。結果、臨床的条件下においては細胞内 LDLR 発現量および培地中 PCSK9 分泌量への影響は小さいことが確認された。一方、細胞膜上のLDLR発現量など、局在化に与える影響については不明なため、現在は LDLR の局在化について解析するとともに、LDLR を介さない経路での LDL 蓄積およびアポトーシス誘導の可能性を考えて、バイオマーカー探索技術を用いた LDL 蓄積およびアポトーシス誘導の要因評価の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度構築した LC-MSMS を用いた分析手法を用い、DPP-4 関連物質に対する各種 DPP-4 阻害薬の影響を ex vivo にて検討中である。また、臨床検体の分析を行うにあたり、既報における分析手法で得られた結果と本研究で構築した MSMS による分析結果に差異を生じたサンプルについて詳細に検討を進めている。今後、分析手法によって測定結果に差を生じる原因となる物質の評価を含め、臨床研究を進めることで血中DPP-4およびDPP-4阻害薬のバランス分析に基づくインスリン分泌促進薬の投与設計法について検討する。 インスリン分泌促進薬に対する抵抗性獲得要因に関する研究においては、昨年度同様にin vitroでの検討を行った。一部のインスリン分泌促進薬の曝露により細胞内LDL蓄積量が増加することが報告されているが、LDLの取り込みに大きく関与するLDL受容体発現量は細胞全体では変化せず、LDL受容体の細胞膜上の発現量に影響を及ぼすPCSK9の分泌についても有意な変化は認められなかった。現在、細胞膜上のLDL受容体発現レベルの評価を行なっており、この結果によりインスリン分泌促進薬曝露による細胞内コレステロール濃度の上昇がLDLRを介した直接的な LDL 取り込み上昇作用によるものか否かが判明する。
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今後の研究の推進方策 |
1. DPP-4 阻害薬および DPP-4 の濃度バランスとインクレチン活性の相関性の評価 ex vivo 実験において、DPP-4 およびインクレチン関連物質の生体内濃度の関係性およびそれらに影響を与える因子の検討を進めており、今後はこれらの内容を臨床研究および動物実験に移行する。臨床研究を行なった後に改めてモデル検証をする予定であったが、ex vivo 解析および臨床研究を合わせて実施することでモデル調整を同時に進め、さらに動物実験で特定条件下でのモデル変動要因を確認することで研究を推進する。 2. スルフォニルウレアおよびDPP-4阻害薬曝露による LDLR および PCSK9 発現量の変動解析 各薬剤曝露による細胞内コレステロール蓄積量の変動について検討しており、細胞膜上の LDLR 発現量を詳細に評価している。今後は同解析を進めるとともに、バイオマーカー探索技術を用い、各薬剤曝露による細胞内 LDL 量変動と相関する細胞由来タンパク質の解析および培地中分泌タンパク質の変動を行う。これにより LDLR を介した直接的な LDL 蓄積上昇以外のメカニズムの可能性を検証する。なお、本研究に要する解析技術は既に他の実験に供されており、微小な修正を加えることですぐに取り組むことができるため、現在解析技術の微小修正を行なっている。
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