インスリン分泌促進薬に対する抵抗性発現に関する要因検討として、LDL受容体およびPCSK9発現量に注目し、肝細胞および膵β細胞を用いた検討を行った。 細胞から分泌される上記因子の分析として、培養細胞およびその培地を培地中サンプル、細胞質中サンプル、細胞膜内サンプルの3分画に分離し、インスリン分泌促進薬曝露によるそれぞれのサンプル中LDL受容体発現量およびPCSK9発現量の変動を解析した。結果、ポジティブコントロールでは大きな変動が見られる一方、インスリン分泌促進薬曝露では多少変化したものの、曝露濃度との相関性は認められなかった。このことから、インスリン分泌促進薬曝露によるPCSK9発現量変化は小さく、インスリン分泌促進薬に対する抵抗性発現に対する影響は小さいものと考えられた。現在、インスリン分泌促進薬を曝露した際の細胞内タンパク質の発現変動および局在化について詳細な検討を続けており、インスリン生成時に関与するC-peptideの影響について特に検討を行っている。 また、DPP-4阻害薬およびDPP-4の血中濃度バランスに基づくインクレチン活性の評価に向けた検討を行った。昨年度までに構築した分析法で解析を進めたところ、不安定なデータが得られたため、分析法を見直し、さらに安定かつ高感度な分析法に修正した。現在、DPP-4阻害薬の薬効を十分に説明できるモデルの構築には至っていないが、血液サンプル中DPP-4濃度およびDPP-4阻害薬の解析について検討を進めるとともに、各DPP-4阻害薬投与時のインクレチン活性の変動に影響を与える要因の検討として、血液中成分の網羅的分析について検討を進めている。
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