研究課題/領域番号 |
15K18924
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 孝明 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (50725744)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 抗MRSA薬 / 治療薬物モニタリング / 薬物動態 |
研究実績の概要 |
新規抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬であるリネゾリドならびにダプトマイシンは、有効治療濃度域や腎機能低下時、低アルブミン血症時の薬物動態については未解明であることから、治療薬物モニタリング(TDM)の有用性については一定の見解が得られていない。本研究は、リネゾリドならびにダプトマイシンにおける有効性と安全性を確保するための至適血中濃度域を前向き臨床研究によって明らかにすること、さらに得られた薬物動態パラメータに基づく抗MRSA薬の個別化投与法を確立することを目的とした。 2015年度は、九州大学病院グローバル感染症センターの協力を得て、前向き臨床研究の実施について九州大学医系地区部局倫理審査の承認を取得した。さらに、新規抗MRSA薬の血中濃度測定系を確立している国内の施設と、血中濃度測定ならびに薬物動態に関する共同研究を開始した。 また、新規抗MRSA薬の薬物動態解析の基盤とすることを目的に、抗MRSA薬の中でも特に薬物動態に関する情報が不足している小児患者(2歳以上16歳未満)におけるテイコプラニンの薬物動態について検討を行った。その結果、初回血中濃度測定値が推奨濃度域(15μg/mL)を下回っている群では、有意に血清クレアチニン値が低く、年齢ならびに体重に有意差は認められなかった。初期投与後の血中濃度には腎機能が影響していることが明らかとなり、血清クレアチニン値に応じた個別投与設計の必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前向き臨床研究については、2015年度に九州大学医系地区部局倫理審査の承認を取得済みである。また、自施設での新規抗MRSA薬の血中濃度測定系の確立と並行して、より早期に臨床研究を実施するために測定系を確立している施設との共同研究を開始した。また、小児患者におけるテイコプラニンの薬物動態の検討結果は、次年度以降の新規抗MRSA薬における薬物動態解析の基盤になるものである。したがって本研究は、おおむね順調に進展していることが考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度は、新規抗MRSA薬投与患者を対象とした前向き臨床研究を引き続き継続する。リネゾリドまたはダプトマイシンが投与開始され、3 日以上継続して投与されている入院患者のうち、本研究計画について十分に理解し、本人による同意が可能な患者を対象とする。投与が3日以内で終了した患者、薬効評価が不能な患者、試験担当医または主治医が不適当と判断した患者は除外する。なお、抗微生物薬安全性評価基に従い、抗MRSA薬投与前に重度の肝障害、腎機能障害がある患者は、安全性の評価から除外する。 血中濃度の採血ポイントは、抗MRSA薬の投与開始から3日目、7日目、14日目(7日目以降は投与継続されている場合)とする。投与期間中の自覚症状、他覚所見、臨床検査値、微生物学的検査を前向きに観察し、有効性・安全性について評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新規抗MRSA薬の血中濃度測定系を確立している施設との共同研究を開始したことから、自施設での測定系確立に要する支出が予定より減少したため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、新規抗MRSA薬投与患者を対象とした前向き臨床研究を引き続き継続する予定であるため、2016年分として請求した助成金と合わせて、物品費、検体郵送費、その他経費に使用する計画である。
|