研究課題/領域番号 |
15K18924
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 孝明 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (50725744)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗MRSA薬 / 治療薬物モニタリング / 薬物動態 |
研究実績の概要 |
抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬であるリネゾリドならびにダプトマイシンは、有効治療濃度域や腎機能低下時、低アルブミン血症時の薬物動態については未解明であることから、治療薬物モニタリング(TDM)の有用性については一定の見解が得られていない。本研究は、リネゾリドならびにダプトマイシンにおける有効性と安全性を確保するための至適血中濃度域を明らかにすること、さらに得られた薬物動態パラメータに基づく抗MRSA薬の個別化投与法を確立することを目的とした。 2016年度は、昨年度に引き続き、九州大学病院グローバル感染症センターおよびリネゾリド・ダプトマイシンの血中濃度測定系を確立している国内の施設と血中濃度測定、薬物動態に関する共同研究を継続した。臨床研究の承諾が得られた診療科において、ダプトマイシンが投与された13例の患者より同意を取得し、投与後3日目、7日目、14日目のダプトマイシン投与前または投与後に採血を行った。今後、一定数の検体を収集した後に、計画している項目の解析に進む予定である。 また、抗MRSA薬であるテイコプラニンにおける小児患者(2歳以上16歳未満)の有害反応発現率と高濃度トラフ値(20μg/mL)との関連性について検討を行った。その結果、テイコプラニンが投与された小児患者86例における腎障害発現率は2.3%、肝障害発現率は5.8%であった。また、有害反応発現率と高濃度トラフ値に関連性は認められなかった。以上の結果より、小児患者においても、重症感染症例ではトラフ値20μg/mL以上を目標に投与量を設定することが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度のダプトマイシン血中濃度測定患者数は目標を20例に設定していたが、同意取得後、血中濃度の採血が可能であった症例数は13例に留まった。九州大学病院では、リネゾリドならびにダプトマイシン使用患者は、院内感染対策チームが投与開始時から介入しているため、培養結果を基に他の適切な抗菌薬に変更となる例が多かったことも要因と考えられた。今後は、対象とする診療科を拡大すると共に、通常診療で行う血液検査の残余検体で代用できる場合は、研究用の採血を不要とするなど、患者や医療スタッフの採血の負担を減らすことでより多くの症例数の確保を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、リネゾリドならびにダプトマイシン投与患者を対象とした臨床研究を引き続き継続する。血中濃度の採血ポイントは、抗MRSA薬の投与開始から3日目、7日目、14日目(7日目以降は投与継続されている場合)とするが、採血の負担を減らすため通常診療で行う血液検査の残余検体で代用できる場合は、研究用採血を不要とするよう研究計画を一部変更する。投与期間中の自覚症状、他覚所見、臨床検査値、微生物学的検査を前向きに観察し、有効性・安全性について評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗MRSA薬の血中濃度測定系を確立している施設との共同研究を開始していることから、自施設での測定に要する支出が予定より減少したため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度も、抗MRSA薬投与患者を対象とした臨床研究を引き続き継続する予定であるため、2017年分として請求した助成金と合わせて、物品費、検体郵送費、その他経費に使用する計画である。
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