研究実績の概要 |
本研究では、遺伝・臨床情報を基に、糖尿病の個別化予防・治療を行うことを目指して、以下の臨床研究を行った。 【検討1】PNPLA3遺伝子変異は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のリスク因子として知られる。NAFLDは通常、肥満に関連して発症するが、日本人ではNAFLD患者の4割が肥満を呈さない。本検討では、人間ドック受診者を対象に、PNPLA3遺伝子変異が非肥満NAFLDのリスク因子となるか否かについて検討した。その結果、PNPLA3遺伝子変異は、肥満の有無に関わらずNAFLDのリスク因子となること、さらに腎機能低下にも関与することを明らかにした(Oniki et al., PLOS ONE, 2015)。 【検討2】脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、インスリン抵抗性改善、動脈硬化抑制、抗炎症作用等を有する。本検討では、アディポネクチンの活性化(多量体化)に関与するDsbA-Lに着目し、生活習慣病リスクが高い統合失調症患者を対象に、DsbA-L遺伝子変異の影響を検討した。その結果、DsbA-L遺伝子変異が統合失調症患者の末梢血単核球中DsbA-L mRNA低下と肥満リスク上昇に関係することを明らかにした(Oniki et al., Psychiatry Res, 2016)。 【検討3】Aldehyde dehydrogenase 2(ALDH2)は、アセトアルデヒドをはじめ、種々の活性アルデヒドを分解する酵素であり、その活性低下に関与する遺伝子変異は飲酒量を規定する因子である。本検討では、ALDH2遺伝子変異とNAFLDリスクとの関係に着目し、人間ドック受診者を対象に検討した。その結果、活性を低下させるALDH2*2アレル保有者でNAFLDリスクが高いことを明らかにした(Oniki et al., Nutrition & Diabetes, in press)。
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