研究課題/領域番号 |
15K18928
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
世戸 孝樹 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30744974)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Pirfenidone / 粉末吸入製剤 / 薬剤性光線過敏症 / 安全性 |
研究実績の概要 |
本研究は特発性肺線維症治療薬である pirfenidone (PFD) について,有効かつ安全性の高い治療法の戦略的開発を目指すものである.すなわち,PFD の適用部位である肺に直接送達できる PFD 吸入製剤を開発し,肺疾患モデルを用いた肺局所での効果発現の確認に加え,PFD 経口投与時に高頻度に発現する薬剤性光線過敏症を安全性の指標として PFD の吸入製剤を開発する.(1) 実験的肺疾患モデル動物を用いた PFD 吸入製剤の薬効評価ならびに(2) PFD 吸入製剤使用時の光毒性,消化管障害ならびに肝障害のリスクの精査を行った.平成 27 年度に調製した respirable powder formulation of PFD (PFD-RP) と spray-dried PFD (SD/PFD) の 2 種を用いて薬効評価を行った.どちらの PFD 粉末吸入製剤も 0.3 mg-PFD/rat と比較的低用量を気道内投与することで気管支肺胞洗浄液中の炎症性細胞数の増加および myeloperoxidase 活性の上昇を抑制し,肺局所で好中球性炎症に対する抑制作用を示した.また,薬理学的有効量の PFD 粉末吸入製剤気道内投与時の全身曝露量は非光毒性発現量の PFD 経口投与時と比し非常に低い値を示し,PFD-RP においては同容量の PFD-RP 気道内投与時にラット皮膚における PFD 濃度は低値を示し,in vivo 光毒性試験にて UV 照射後に炎症反応を認めなかった.消化管障害リスクについては,胃および小腸への組織曝露量の検討は達成したが,消化管の運動性については評価手法の再構築が必要と判断した.肝障害リスクについては PFD-RP 気道内投与時の肝内濃度は非常に低く,肝機能への影響は強くないことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 28 年度に予定していた検討課題である (1) 実験的肺疾患モデル動物を用いた PFD 吸入製剤の薬効評価について,平成 27 年度に調製した PFD-RP ならびに SD/PFD の 2 つの PFD 粉末吸入製剤を用いて肺炎症モデルラットの肺局所での炎症反応抑制作用についてさらに精査を行い,薬理学的有効量ならびに薬理学的有効量の PFD 粉末吸入製剤使用時の全身曝露リスクについて精査することができた.続いて (2) PFD 吸入製剤使用時の光毒性,消化管障害ならびに肝障害のリスクの精査について,光毒性リスクおよび肝障害リスクの評価は達成できたが,消化器症状のリスクについては消化管の運動性の評価方法が適切ではなかったと判断し,評価手法の再検討を行ったので本プロトコルを用いて検討を実施している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は PFD 粉末吸入製剤使用時の消化器症状リスクについて動物実験を実施する.臨床において PFD 経口投与時の消化器症状リスクは臨床上問題となっており,本副作用の回避達成は非常に重要性が高い.したがって,再構築した評価手法を用いて PFD 粉末吸入製剤使用時の消化器症状リスクについて精査する.消化器症状については色素を用いた小腸輸送能評価でリスク評価を実施する予定である.実験方法としては PFD 粉末吸入製剤気道内投与ならびに PFD 経口投与後に色素を経口投与し,小腸内での色素の移動距離を指標に各製剤投与後の小腸輸送能を比較することで,薬理学的有効量の PFD 粉末吸入製剤使用時の消化器症状リスクを精査する.PFD 粉末吸入製剤気道内投与の際に PFD 経口投与時と同容量の精製水を経口投与することで同様の消化管の運動性を示すようなプロトコルとする.以上の検討により,PFD 粉末吸入製剤使用時の副作用発現リスクを提示することで適切な投与経路を介した治療法開発に貢献でき,高い実用性と学術性のある研究成果を提示できると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
PFD の消化器症状の副作用リスク評価において,評価手法が適切ではなかったため評価手法を再検討する.
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次年度使用額の使用計画 |
消化管運動性評価に適したプロトコルの再構築を行い,新たなプロトコルを用いて PFD の消化器症状リスクについて検討を行う.
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