前年度までの検討において、ヒトiPS細胞から分化させた腸管幹細胞の単離が可能であることが示された。そこで本年度は前年度に得られた結果をもとに単離法の改良を行い、ヒトiPS細胞由来腸管幹細胞の単離を行った。その方法で単離した細胞集団において、腸管幹細胞マーカーであるLGR5やEphB2、CD133などの発現が単離前の細胞集団と比較して高かった。また、単離した細胞集団を腸管上皮際細胞へ分化させたところ、腸管上皮マーカーであるsucrase-isomaltaseやvillin、薬物トランスポーターであるBCRPなどの発現が認められた。このことから、単離した腸管上皮細胞への分化能を有する腸管幹細胞様の細胞であることが示唆された。また、腸管幹細胞の維持培養に関しても、様々な条件の最適化を行った。その結果、これまでよりもより効率的に培養が可能な条件を見出すことができた。また、維持培養した細胞は、CYP3A4活性、CYP3A4誘導能、P-gpやBCRPといった排出トランスポーター活性も有していた。 腸管幹細胞の単離および維持培養は創薬研究でヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞を広く利用してくにあたって重要な技術である。したがって、本研究で得られた成果は、ヒトiPS細胞から作製した腸管上皮細胞の創薬研究への応用に向けて有用な知見であると考えられる。
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