研究課題/領域番号 |
15K18930
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
太田 欣哉 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90448704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | OATP2B1 / トランスポーター / 5-carboxyfluorescein / 小腸 / 吸収 / スクリーニング / 薬物相互作用 |
研究実績の概要 |
本課題は、小腸で有機アニオン性医薬品の吸収を担っているorganic anion transporting polypeptide 1A2(OATP1A2)及びOATP2B1 の蛍光性基質を利用した機能評価系の構築を試み、その評価系を用いてOATP に対する飲食物中成分の影響を探るものである。今年度はまず、機能評価系の構築のために、MDCKII細胞にOATP1A2または2B1の遺伝子を導入し、これらのトランスポーターを高発現する安定発現細胞を作製した。次いで、この安定発現細胞を用いてOATP1A2及び2B1によって輸送(細胞内取り込み)される蛍光性基質の検索を行った。その結果、これまでに代表者らが見出していたOATP2B1の基質である5-carboxyfluorescein(5-CF)が検索の対象とした他の蛍光性物質よりもOATP2B1による輸送活性が高いことが明らかになった。一方、OATP1A2については、高い輸送活性を有する蛍光性の基質を見出すことはできなかった。OATP2B1の機能評価系構築のため、5-CF輸送の最適な試験条件の検討を行い、弱酸性条件(pH5.5)において高い輸送活性を有する一方、中性条件(pH7.4)においてはほとんど輸送活性がないことが明らかとなった。このpH依存性は、OATP2B1の代表的な基質であるestrone sulfate(ES)ではみられない性質であるが、消化管内のpHは弱酸性であることから、pH5.5で試験を行うこととした。また、5-CF輸送の濃度依存性について検討したところ、これまでにES等の他の基質で見出されている二相性がみられ、OATP2B1には5-CF輸送についても高親和性及び低親和性の基質認識部位が存在することが示唆された。これらの試験結果をもとにOATP2B1の機能評価の条件を設定した。次に、この評価系が妥当であることを確認するために、ES及び5-CFの輸送に対する各種阻害剤の影響を比較検討したところ、両基質の輸送に対する阻害活性に良好な相関がみられ、本評価系が妥当であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光性の基質を用いたOATP2B1の迅速機能評価系が構築できた一方、OATP1A2が輸送活性を有する蛍光性基質を見出すことができておらず、OATP1A2の蛍光性基質の検索については今後も検討を続ける必要がある。しかしながら、ヒトの小腸における有機アニオン性医薬品の吸収に対する寄与はOATP1A2よりもOATP2B1の方が大きいと考えられており、薬物吸収において、より重要度の高いOATP2B1の機能評価系が構築できたことは大きな進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きOATP1A2が輸送活性を有する蛍光性基質の検索を行い、OATP1A2の迅速機能評価系への利用の可能性を探る。 蛍光基質を利用した機能評価系が構築できたOATP2B1に関しては、本評価系を用いて飲食物中に含まれる物質による影響を評価し、OATP2B1の輸送に影響を及ぼす物質については、その詳細なメカニズムを解明することにより、OATP2B1の基質である医薬品と飲食物のとの相互作用の予測に利用可能な情報の集積を目指す。
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