近年、アザチオプリンを関節リウマチに対して投与する例が増えている。欧米人と日本人とではアザチオプリン代謝酵素の多型頻度が異なり、日本人患者についての治療の有用性は不明である。本研究ではこの点を明らかにするとともに、アザチオプリンの代謝に関連する酵素の遺伝子多型が関節リウマチの治療効果にも影響するか否かを明らかにする目的で研究を行った。 平成27年度はアザチオプリンを服用中の関節リウマチ患者から書面による同意を取得し、試験へのエントリーを開始した。患者の遺伝子多型解析および、診療記録からのデータ抽出を行い、薬物代謝に関連する酵素の遺伝子型と治療効果との関連を解析した。この成果の一部を国際学会にて発表した。なおこの研究は、研究倫理委員会の承認のもとに実施した。 平成28年度は研究計画に従い、アザチオプリンまたはメトトレキサートとインフリキシマブを併用した関節リウマチ患者を対象とし、アザチオプリンによる抗インフリキシマブ抗体の産生抑制効果を検討した。この結果、患者血清中抗インフリキシマブ抗体濃度は、アザチオプリン併用患者及びメトトレキサート併用患者のどちらにおいても、5名中4名で定量限界濃度を下回り、アザチオプリンはメトトレキサートと同様に抗インフリキシマブ抗体の産生を抑制する可能性を示した。これらの研究成果をもとに論文を作成し、海外の学術雑誌に掲載された。 平成29年度は血球細胞中のアザチオプリン代謝物濃度を測定する方法について検討を行った。主要な6種類の代謝物を、HPLC を用いて同時に測定することを目指し、種々の測定条件検討を行った。この結果、それぞれの代謝物を分離したピークとして検出することができた。 本研究成果は、関節リウマチ患者に対してアザチオプリンを投与する際の感受性の予測および不必要な投与の回避につながるものである。
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