研究課題/領域番号 |
15K18935
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
多田 塁 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70635888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粘膜ワクチン / 真菌症 / 粘膜アジュバント / リポソーム |
研究実績の概要 |
本研究では、粘膜アジュバント活性を有するリポソームと真菌抗原蛋白質の経鼻投与により、深在性真菌症への応用が可能な経鼻投与型の新規真菌症ワクチンの開発を目的としている。H27年度は、本ワクチンシステムの構成成分として用いる真菌抗原蛋白質のリコンビナント蛋白質発現系の確立を第一の目的とし、以下の項目について検討を進めた。 ①、病原性真菌Candida albicans感染に対し、防御的に機能することが知られるSap2pおよびそのトランケート蛋白質であるSap2t77-400pの可溶性蛋白質を大腸菌発現系にて作製を試みた。これら蛋白質の大腸菌発現系は、蛋白質の不溶化あるいは精製度の問題が生じたが、種々の検討を経てC末端側にStrep (II) tagを付加したpCold1ベクターにSAP2遺伝子をクローニングし、形質転換したSHuffle Express Competent E. coliにて発現誘導後、TALON metal affinity resin(His tag)とStrep-Tactin(Strep (II) tag)を利用した2段階のアフィニティ精製により、高純度の可溶性蛋白質を得ることに成功した。 ②、病原性真菌Aspergillus fumigatus感染に対し、防御的に機能することが知られるPep2pの可溶性蛋白質を大腸菌発現系にて作製を試みた。種々の大腸菌株、ベクターおよび可溶化タグを利用した大腸菌発現系を試したものの、十分量の可溶性Pep2pを得ることが出来なかった。 以上、本年度の検討ではC. albicans由来の可溶性抗原を高純度かつ多量に作製可能な大腸菌発現系を構築することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の目標として、真菌由来の可溶性抗原蛋白質を大腸菌発現系によって作製することを掲げた。種々の検討結果から、C. albicans由来Sap2pの可溶性抗原蛋白質を高純度かつ多量に作製することが出来た。以上のことから、A. fumigatus由来の可溶性抗原蛋白質の作製は難航しているものの、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度に得た可溶性抗原蛋白質を用いた検討を行うと共に、引き続き真菌抗原蛋白質の調製を行う。具体的には、H28年度には下記の検討項目を実施する。 ①、A. fumigatus由来の可溶性抗原蛋白質として、Pep2p以外の抗原の大腸菌発現系を用いた発現系を構築する。 ②、ピキア酵母発現系を用いて、可溶性Pep2pの作製を試みる。 ③、H27年度に得られたSap2pを抗原として用い、本リポソームと共に経鼻投与することにより、抗原特異的な免疫応答を全身及び粘膜の両面で誘導可能か否かを、抗原特異的IgAおよびIgG産生を指標に検討する。さらに、用いるリポソームの構成脂質と粒子サイズの最適化を実施する。 ④、本リポソームと真菌抗原蛋白質の免疫によってマウスに誘導される抗原特異的免疫応答の質を、CD4+ T細胞からのサイトカイン産生(IFN-γ、IL-4およびIL-17Aなど)を指標に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は、おおむね予定通りに進んだものの、H27年度末より開始予定であった動物実験の実施まで至らなかったため、その分の消耗品と実験動物代が未使用額として残ってしまったためである。また、充足率の関係で購入予定だった安全キャビネットの購入を断念した影響もある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用計画としては、H27年度に作製した抗原蛋白質と本リポソームの経鼻投与による抗原特異的免疫応答の検討のための実験動物あるいは試薬代として使用予定である。また、予算の使用状況によっては、昨年度購入予定だった安全キャビネットの購入も考慮に入れる。
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