1. ヒト血清中脂肪酸及び3-ヒドロキシ酪酸(3-HB)の定量 東邦大学医療センター大森病院(研究協力者・辻野)の協力のもと、いずれも本研究の目的・内容を文書にて十分に説明し、必要な研究参加の同意を文書にて得た後、ARMS患者群の血清(n=20)を得た。同様に、学生ボランティア(健常人群)の血清を得た(n=42)。血清10 uLを除タンパク・クロロホルム抽出・DBD-EDによる蛍光誘導体化の後、HPLC-蛍光検出法を用いて血清中脂肪酸定量を行った。ARMS群の血清中脂肪酸濃度は健常人群よりも低く、ドコサヘキサエン酸 (EPA)及びオレイン酸の有意な濃度低下が認められた。血清10 uLを除タンパク・NBD-PZによる誘導体化反応・固相抽出の後、LC-TOF-MSによる3-HB定量を行った結果、脂肪酸と同様に3-HB濃度も健常人群よりもARMS群の方が低濃度であった。これらの結果から、ARMS患者群においても酸化ストレスが亢進し、反応性カルボニル化合物が蓄積している可能性が示唆された。 2. EPA製剤経口投与後のラット血漿中脂肪酸濃度の変動解析 EPA製剤をラットへ単回経口投与した後、経時的に採血し、血漿を得た。血漿中脂肪酸濃度を上記の方法で定量し、濃度推移を解析した。その結果、EPA製剤投与後、血漿中EPA及びその代謝体であるドコサヘキサエン酸濃度は経時的に増大し、12時間後においても血漿中濃度が高く維持された。EPA製剤投与量の増大に伴うEPAのAUCの増加も確認された。一方、EPA製剤非投与のラット血漿にEPA製剤を添加し、前処理・測定をしてもEPA濃度増加は認められなかった。よって、血漿中に残存するEPA-エチルエステル体(未代謝体)が前処理操作中にEPAへと変換されたのではなく、EPA製剤投与によってラット血漿中EPA濃度が上昇したことが確認された。
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