研究課題/領域番号 |
15K18938
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上島 智 立命館大学, 薬学部, 助教 (70734771)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第Xa因子阻害薬 / 母集団解析 / PK/PD解析 / 薬理ゲノム解析 / 個別化投与設計 |
研究実績の概要 |
近年、上市された直接トロンビン阻害薬や血液凝固第Xa因子阻害薬などビタミンK非依存性経口抗凝固薬の安全性や有効性はワルファリンと同等以上であることが報告されている。しかし、これらの薬物を添付文書に準じて投与しても、重大な副作用である出血症状を高頻度で認められるのが現状である。本研究では、第Xa因子阻害薬アピキサバンの個別化投与設計法の構築を目指し、患者背景や薬物動態関連遺伝子が体内動態や薬効・副作用に及ぼす影響について検討を進めている。平成27年度においては、文書にて同意を取得した患者を対象に、アピキサバンの血中トラフ濃度に及ぼす薬物動態関連遺伝子多型の影響について検討した結果、ABCG2やCYP3A5の遺伝子多型がアピキサバンの投与量に対する血中トラフ濃度の比 (C/D比) に影響を及ぼすことが明らかになった。更に、アピキサバンの血中濃度と血液凝固検査項目 (PT、PT-INR、APTT) や第Xa因子活性の関係について速度論的に解析した結果、PTやPT-INRはアピキサバンの血中濃度と有意に相関したが、血中濃度上昇に伴うPTやPT-INRの延長作用や、その作用に対する個体間変動は小さかった。一方、第Xa因子活性はアピキサバンの血中濃度の上昇に伴って非線形的に減少し、第Xa 因子活性に対するアピキサバンのIC50値の個体間変動は大きい値を示した。従って、ABCG2やCYP3A5の遺伝子多型がアピキサバンの血中濃度の変動要因になり得ること、第Xa因子活性のプロファイルが他の血液凝固検査項目とは異なり、大きな個体差が認められることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究においては、予備検討段階ではあるものの、順調に進捗している。一方、臨床研究においては、当初の計画より早いペースで目標症例数に近い患者から同意を取得することができており、アピキサバンの血中トラフ濃度に影響を及ぼす遺伝子多型を同定できたこと、アピキサバンの薬効の個体差を定量的に評価するなど、一定の研究成果を上げることができた。以上の進捗状況を勘案し、概ね順調に研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は概ね順調に研究が進捗していることから、研究計画の変更を特に予定していない。研究最終年度である平成28年度では、臨床研究について、引き続きデータを集積しつつ、アピキサバンの母集団薬物動態/薬力学/薬理ゲノム解析を遂行することで、アピキサバンの体内動態や薬効・副作用に影響を与える変動要因の同定とその影響の大きさを定量的に明らかにしていく。また基礎研究においても、臨床研究と並行して遂行することで、アピキサバンの体内動態の個体間変動を規定する薬物トランスポーターや薬物代謝酵素を明らかにする。 これら一連の研究成果を随時関連学会や学術雑誌で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の直接経費のうち、約10%が未執行になったが、これは購入予定であった試薬類を年度内に納品することが不可能であったことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に購入できなかった試薬類については研究最終年度である平成28年度に購入することから、予算執行上特に問題ないと考える。研究執行に必要な消耗品類は購入可能な状況にあることから、平成28年度配分の研究予算については、当初の計画を特に変更することなく執行する。
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