研究課題/領域番号 |
15K18941
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (30454474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | cisplatin / 腎障害 / 強制利尿法 / PKPD modeling / 薬物動態 |
研究実績の概要 |
【目標】平成28年度の研究目標は、『強制利尿法(Forced Diuresis: FD)併用時のcisplatin (CDDP)の尿中濃度を含む薬物動態解析』であった。これを達成する為に以下の実施計画を設定した。1.FDによる尿量増加効果の定量化。2.FDの尿量生成速度のmodeling。3.FD併用時の血漿中非結合型・尿中CDDPおよび尿量の定量。4.FD併用CDDP投与時の薬物動態学的modelの構築。 【結果】1および2.FD(20% mannitol, 4時間静脈内定速投与)による最大尿量生成速度は、FDの用量(投与速度 0.3~3.0 mL/hr)に応じて線形に増加した。一方、CDDP投与後ではFD高用量域(2.0および3.0 mL/hr)において、CDDP非投与FD群と比して尿量の減少が観察され、CDDPによる腎血流量低下の関与が示唆された。このため、当初予定していたCDDP投与後の任意の時間における尿量生成速度をmodelingするのは、煩雑になると考えられた。3.FD併用時の血漿中非結合型CDDP濃度推移は、FDの用量に依らず大きな変化は認められなかった。他方、尿中CDDP濃度は、FD用量に依存して減少し、最大でFD非併用時に比して、約1/10への著しい減少を呈した。また、これに伴い腎臓へのCDDP蓄積量の減少も観察された。4.FD併用CDDP投与時の薬物動態学的modelに関しては、血漿中非結合型CDDP濃度に大きな変化がなく、尿中CDDP濃度推定は複雑となるため、実測値を用いる事とした。 【要約】前年度までの成果であるFDによるCDDP誘発性腎障害軽減作用に対して、FDの用量に依存した尿量増加および尿中CDDP濃度・腎臓中CDDP蓄積量減少が観察された。本年度成果より、次年度でのCDDP誘発性腎障害の薬物動態学-薬力学的解析の為の有用な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、FDによる尿生成速度をmodel化し、CDDP排泄速度と併せて“尿中CDDP濃度推移”をmodel化する予定であった。しかし、「研究実績の概要」項で述べたとおりFDの高用量でCDDP投与によるものと推察される尿量減少が観察され、任意の時間における尿生成速度を立式する為には血漿中非結合型CDDPによる腎血流量阻害様式を組み込む必要が考えられた。このmodelを構築する為には、糸球体濾過量(GFR)と血漿中非結合型CDDP濃度の関係を検討する必要があり、別個のGFR-CDDP検討系を立ち上げる必要があるが、煩雑であり、また、これに注力すると本検討の主旨から逸れると考えられ、本研究課題では“実測値”として扱うこととした。この修正の必要性は、当該研究課題申請時から挙げており、想定内である。これらの経緯より、“おおむね順調に進展”とした。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、これまでの実験成果をもとに「強制利尿法併用時のCDDP薬物動態学薬力学的(PKPD)解析」を行う。ただし、当初研究計画に修正を加えて“尿量変化を実測値”として扱い行う。これと並行して、解析精度を高めるため引き続きデータ収集も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析データの精度を高めるために、動物実験データを追加収集する為。詳細を述べると、現在、FDの用量として、0.3、1.0および3.0 mL/hrを設定しており、2.0 mL/hrの用量でのデータを追加収集する。
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次年度使用額の使用計画 |
追加収集するFD 2.0 mL/hr用量に関して、薬物動態実験(尿生成速度、血漿中非結合型CDDP、尿中CDDPおよび腎臓中CDDP蓄積量)および薬力学的実験(CDDP誘発性腎障害)を行う。これらの諸経費として支出予定である。
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