研究実績の概要 |
【最終年度の研究成果】前年度報告の通り、FD併用時の尿量のmodelingを断念し実測値として扱った。また、3段階のFD用量(0.3, 1.0, および3.0 mL/hr 20% mannitol)に加え、精度向上の為に2.0 mL/hrでの追加データを収集していたが、研究期間の制約上、3段階のFD用量で最終解析を行った。 【結果】PK試験結果として、血漿中遊離型CDDPの薬物体内動態には、FDの用量に依らず非併用群と統計学的有意な変化は無かった。一方、FDの用量増加に伴い、尿量の著しい増加(最大で約30倍)が確認され、尿中CDDP濃度の低下(最大で約1/10)が観察された。また、腎臓中CDDP蓄積量もFD用量依存的に減少した。PD試験結果としては、FD用量依存的にCDDP誘発性腎障害は抑制されていた。以上の結果を用いたPKPD解析により、腎臓中CDDP蓄積量または尿中CDDP濃度下面積とCDDP誘発性腎障害には非常に強い相関(r=0.986またはr=0.995)が観察され、強制利尿法により尿中CDDP濃度を下げるほど腎障害が抑制できることが示された。 【研究期間全体を通した研究成果】結果として、①FD併用によりCDDPの血中濃度推移には大きな変化は無いが尿中CDDP濃度が著しく低下する、②PK/PD解析により、FDによる尿量増大・CDDP尿中濃度低下に伴う尿細管からのCDDP受動拡散減少により、CDDP誘発性腎障害の減弱が可能、および③尿中CDDP濃度を用いた回帰式による腎障害の予測精度は、平均絶対誤差率として22.5%で概ね良好であり予測可能であった。以上の結果より、本実験系であるCDDP投与前後2時間のmannitolを用いた強制利尿法では、腎障害軽減作用はFDの用量に線形であり脱水を回避しつつ最大限に尿量を確保することが腎毒性軽減に寄与することが示された。
|