研究課題/領域番号 |
15K18944
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
山森 元博 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (10444613)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | galectin-1 / 腎臓がん / 遊走 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の根治を目指すに当たり、がん細胞の転移の抑制・予防法の確立は必須の課題である。我々は、転移の有無により予後が大きく左右される腎臓がん患者の血清中に、galectin-1(Gal-1)が高発現していることを発見したことから、Gal-1とがん転移との関連性について基礎的な研究を実施している。 これまでに、ヒト由来腎臓がん細胞ACHN細胞をGal-1高濃度条件下で処置した際に、細胞増殖に影響を与えずに遊走能が増大することを確認した。今回、Gal-1が遊走能に影響を与える細胞内メカニズムの解明を目的として、ACHN細胞をGal-1高濃度条件下で処置した際の細胞内タンパク質の発現量の変化をwestern blotting法を用いて確認した。Gal-1濃度依存的に細胞骨格を制御するタンパク質の発現量が増加した。このとき、細胞増殖に関与するタンパク質の発現に変化は見られなかった。Gal-1が細胞骨格の制御に影響を与えることで、細胞の遊走能が増す可能性が示された。 一方、細胞遊走以外の転移過程におけるGal-1の役割を明らかにすることを目的として、転移過程において重要である細胞接着や浸潤にGal-1が関与しているかを確認した。既存の接着および浸潤アッセイキットを用いて評価した結果、Gal-1濃度依存的に接着細胞数が増加したが、浸潤能には影響を与えなかった。よってGal-1は、がん転移過程の細胞接着にも影響を及ぼしている可能性が示された。今後、Gal-1の細胞接着への影響について詳細なメカニズムを解明することで、がん転移の抑制・予防法の確立に向けて有益な情報を得られると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施できていなかったGal-1による浸潤能および接着能への影響について確認ができた。また今年度の検討でGal-1濃度依存的に細胞骨格を制御するタンパク質の発現量が増加したことから、遊走能に影響を及ぼすGal-1のシグナル伝達機構の解明が進んだ。一方、平成28年度に予定していた細胞内Gal-1のがん転移過程への影響についての検討は、RNA干渉法の確立まで済んでおり、平成29年度の早期に結果を出せる見込みであることから、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施できていない細胞内Gal-1のがん転移過程への影響について解析する。またGal-1が細胞骨格関連タンパク質の発現に影響を及ぼしたことから、既存薬剤(腎臓がん治療薬、NSAIDs、ビスホスホネート製剤など)で処置したときの遊走能および細胞骨格関連タンパク質の発現への影響について確認する。
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