研究課題
これまでに腎臓がん患者の血清中にgalectin-1(Gal-1)が高発現していることを明らかにしており、腎臓がんの転移におけるGal-1の役割を明らかにすることを目的に基礎的研究を行った。平成27年度には、ヒト由来腎臓がん細胞ACHN細胞をGal-1高濃度条件下で処置した際に、細胞増殖に影響を与えず遊走能が増大することを確認した。また平成28年度には、Gal-1が細胞の遊走能に影響を与えるメカニズムの解明を目的に、ACHN細胞をGal-1高濃度条件下で処置した際の細胞内タンパク質の発現量の変化をwestern blotting法を用いて確認し、Gal-1濃度依存的に細胞骨格を制御するタンパク質の発現量が増加することを明らかにした。これらの結果からGal-1刺激が細胞骨格の制御に影響を与えることで、細胞の遊走能が増すことが示唆された。一方、血清中Gal-1の高発現患者が必ずしも転移をするわけではない。Gal-1には内因性と外因性のものが存在し、腎臓がんの転移には内因性および外因性Gal-1の分子間相互作用が関与している可能性がある。そこで平成29年度は、RNA干渉法にて細胞内Gal-1をノックダウンさせた細胞を用いて、細胞内Gal-1抑制下における腎臓がん細胞の遊走および浸潤への影響について検討を行った。Gal-1ノックダウン細胞の遊走数および浸潤数を計測したところ、コントロール細胞の遊走数および浸潤数との差は認められなかった。したがって、腎臓がんの転移には内因性および外因性Gal-1の分子間相互作用の関与は認められなかった。本研究の結果から腎臓がんの転移における外因性Gal-1の関与および細胞内メカニズムの一端が明らかになったことで、腎臓がんの転移の抑制・予防法の確立に向けて有益な情報を得られたと考える。
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Cancer Chemotherapy and Pharmacology
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