【背景・目的】 近年、難溶解性薬物の溶解性を改善する手法として脂質分散製剤が注目を集めている。また、興味深いことに、経口投与された脂質分散製剤は①脂質の消化、②胆汁による希釈、③非撹拌水層での脂質の吸収により消化管内で過飽和を生じ、吸収が改善されることが報告されている。しかしながら、脂質分散製剤からの薬物吸収メカニズムについては未だ不明な点が多い。 本検討では、脂質分散製剤からの薬物吸収性予測法の構築を最終的な目的として、まず種々の自己乳化型製剤の調製を試みた。続いて、脂質分散製剤からの薬物吸収に影響を与える要因を明らかにするため、難溶解性のFenofibrate(FB)をモデルとし、自己乳化型製剤投与後の消化管内薬物濃度評価法の構築を試みた。 【結果・考察】様々な中鎖、長鎖トリグリセリド、界面活性剤およびCosolventを種々の濃度で混合し自己乳化型製剤の調製を行った。その結果、大豆油:MaisineCC:Cremophor ELを1:1:2およびCaptex300:Capmul C8:Cremophor ELを1:1:2の割合で混合し水に分散させた場合、微細なマイクロエマルションを形成することを見出した。次に、これら2種のマイクロエマルションにFBを溶解しラットに経口投与後、消化管内濃度-時間推移の評価を行った。その結果、FBは胃内で一部析出していたものの小腸中部まででほぼ完全に吸収されていることが示された。胃内でのFBの析出においては、消化管内水分採取後のサンプル処理の過程で起こった可能性も否定できないため、今後確認する予定である。 以上、我々が開発した消化管内薬物濃度に基づいた吸収性評価法は脂質分散製剤にも適用できる可能性が示唆され、脂質分散製剤からの薬物吸収メカニズムの解明に極めて有用であると考えられた。
|