研究課題/領域番号 |
15K18947
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
小森 理絵 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (70412400)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 症候性てんかん / レベチラセタム |
研究実績の概要 |
てんかんは、すべての年代において幅広く発症する最も一般的な慢性脳疾患であるが、近年では高齢者における発症の増加が著しい。これは、超高齢社会への移行に伴い、高齢者で多く見られる脳血管障害やアルツハイマー型認知症等、脳器質的障害の合併症としての症候性てんかんが多く発症しているためである。症候性てんかんは、原因となる脳障害発生後、脳内で様々な変化が起こり異常なニューロンネットワークが形成される前発作過程(てんかん原性)を経て発症する。てんかん原性は一定時間(長い場合は数年)を要するため、この間の脳変化を食い止めることができれば、後のてんかん発症を回避することができると考えられる。しかし、脳障害からてんかん発症に至る機構が明らかではなく、脳障害発生後に従来の抗てんかん薬を投与しても発症抑制効果はないため、てんかんの予防的治療法は確立されていない。今後ますます増加するであろう脳障害患者のQOL向上のためにも、症候性てんかんの予防的治療法の確立は重要である。 本研究は、症候性てんかん発症の分子機構を明らかにすることにより、てんかん発症を予防する薬物治療法を探索することを目的としている。脳障害発生後のてんかん原性において、特に初期段階に注目して様々な分子の発現変動解析を行った結果、多様なインターロイキン、ケモカイン等の発現に大々的な変動が起こっていることが分かった。これら因子の発現制御の破綻が、てんかん原性初期に起こる脳内炎症の進行等を引き起こし、てんかん発症へとつながることが予測される。また、従来の抗てんかん薬とは作用機序が異なる新規抗てんかん薬レベチラセタムの投与により、これらの発現変化の多くが抑制されることを明らかにした。このことにより、レベチラセタムの症候性てんかん発症予防薬としての可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症候性てんかん発症の分子機構の解明を目指した詳細な発現解析を行い、てんかん原性に起こる脳内炎症等の脳内変化につながると考えられるサイトカインの発現変動を明らかにしたことにより、脳障害発生後に起こる現象についてある程度推測できる状況になった。個々の因子の関連性については今後更なる解析が必要である。同時に、多くのサイトカインの発現変動による全体的なサイトカインバランスの変化そのものが重要である可能性もあると考え、よりゲノムワイドな遺伝子発現、及び転写活性の変化を把握するためのCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)解析を行い、現在データを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の産前産後休暇、育児休業の取得に伴い、平成30年1月から平成31年2月までの研究の中断を予定している。研究期間の延長、及び計画の変更は申請し、承認されている。復帰後は計画に基づいて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後休暇、育児休業取得により平成30年1月から研究が中断しているため。研究期間の延長により研究計画を変更したので、変更後の研究計画に沿って使用する予定である。
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