研究課題/領域番号 |
15K18949
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
吉田 裕樹 九州保健福祉大学, 薬学部, 講師 (90469411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肥満 / 食品 / 免疫細胞 / 糖尿病 / 予防医療 |
研究実績の概要 |
免疫細胞の脂肪組織への浸潤とそれに伴う炎症の増悪化は、糖尿病などの肥満関連疾患の発症および進展に深く関与している。そこで、本研究では、免疫細胞の機能制御と肥満関連疾患に対する食品因子の影響を評価することを目的としている。 我々は、これまでに、柑橘類フラボノイドの1つであるナリンゲニンが、高脂肪食誘導性の肥満初期(2週間の高脂肪食負荷)の脂肪組織へのマクロファージ浸潤を抑制することを、リアルタイムPCRおよび免疫組織化学染色によって明らかにした。しかしながら、本研究では、より感度良く、効率的に免疫細胞を測定するために、フローサイトメトリーを行うこととした。まず、マウス脂肪組織から間質血管細胞群(SVF)を分離し、免疫細胞の抽出法を構築した。その後、各免疫細胞のマーカー分子に対する抗体の反応条件やフローサイトメーターの調整および測定条件の検討を行い、免疫細胞を識別・測定した。その結果、肥満初期において、高脂肪食による脂肪組織へのマクロファージ(CD11b(+), F4/80(+))の浸潤が確認され、また、ナリンゲニンが高脂肪食誘導性のマクロファージ浸潤を抑制することを確認した。次にCD4陽性T細胞(CD3(+), CD4(+), CD8(-))およびCD8陽性T細胞(CD3(+), CD4(-), CD8(+))の脂肪組織への浸潤を測定した。その結果、高脂肪食による負荷は、CD4陽性T細胞の脂肪組織への浸潤を抑制し、ナリンゲニンはその抑制を回復させた。一方、CD8陽性T細胞については、高脂肪食により浸潤が増加し、ナリンゲニンはそれを抑制した。脂肪組織におけるアディポカインの発現量変動は、抗体アレイを用いて測定した。その結果、高脂肪食の負荷は、MCP-1やM-CSFなどのケモカインの発現量を増加させ、ナリンゲニンはそれを抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を実施するにあたり、フローサイトメーターの調整・修理に手間取ったため、好中球やBリンパ球などの免疫細胞の測定が遅れており、現在、解析中である。また、より詳細なアディポカインやサイトカインの発現量変動を測定する必要があるため、早急に抗体アレイやリアルタイムPCRを実施する。
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今後の研究の推進方策 |
一部未測定の免疫細胞の動態を早急に解析する。また、より肥満初期のアディポカインやサイトカインの発現量変動を測定することで、免疫細胞の動態との連関を解析する。次に、培養細胞や組織から分離した細胞を用いて、免疫細胞の動態に関与するサイトカインやケモカインレセプターなどの発現量変動を測定することで、各細胞の機能制御に対する影響を解析する。また、TSODマウスなどの病態モデル動物を用いて、ナリンゲニンを投与後の免疫細胞の動態およびアディポカイン等の発現量の変動を測定する。以上の研究を推進することで、食品因子の疾患・病態予防および改善機構の解明を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に向けて、日常的・継続的に使用する実験用試薬や消耗品の突発的な支出に対して、少額の予算を残しておいたが、結果的に使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の助成金と合わせ、実験用試薬や消耗品の購入にあてる。
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備考 |
吉田裕樹:柑橘類フラボノイドのナリンゲニンに肥満関連疾患予防の可能性(記事)、Medical Tribune、2015.11.5. Vol.48, No.45.
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